「話しかけても返事がない」
「自分にだけ、目を合わせてくれない」
そんな職場にいると、朝の一歩が重くなる。
先に書いておくと、無視されている側が悪いことなんて、まずない。
無視する人の末路は「孤立」だとよく言われる。それは間違っていないけど、それだけじゃなかった。
僕が見たのは、もう少し静かなものだ。
自分がやったことを忘れて、同じことをされた時だけ怒るようになる。そしてそれを、周りは黙って見ている。
こんにちは。ナマケ者です。
この記事は、無視してくる相手に仕返しをするための記事じゃない。むしろ、そこに時間を使わなくて済むように書いた。
僕は6歳の頃、従兄弟にハブられていた。大人になってからは、工場の先輩と半年間お互いに無視し合ったこともある。
その両方で見たものを、心理学の研究と厚生労働省の資料を確認したうえで書いていく。
ただ、この話には続きがある。
なぜあの人は、二人きりの時は普通に話すのに、人が集まった途端に無視を始めるんだろうか?
もくじ(タップで開閉)
- 第1章:無視する人の末路は孤立だけじゃない
- ◾️「孤立する」は当たっているけど半分
- ◾️僕をハブった従兄弟が、大人になって言った一言
- ◾️その場にいた全員が、黙っていた
- ◾️もうひとつの末路は「自分がやったことを覚えていないこと」
- ◾️記憶を歪ませるのは性格じゃなく立場だった
- 第2章:無視する人の心理は人が見ている時だけ発動する
- ◾️祖母の家で二人きりになった夜、ゲームボーイをやらせてくれた
- ◾️無視は「嫌い」じゃなく、見せるための行為だった
- ◾️わざと無視する人を分けると3つになる
- ◾️「自分にだけ無視される」が起きる理由
- ◾️性別で分けても、たぶん意味がない
- 第3章:職場で無視する人に起きること
- ◾️仲が良かった先輩が、急に無視してくるようになった
- ◾️面倒だったから、僕も無視で返した
- ◾️折れたのは、先に無視してきた方だった
- ◾️向こうは1回、こっちは半年
- ◾️僕の方が「覚えていない加害者」だった可能性もある
- ◾️そして1ヶ月で、元に戻った
- ◾️無視はパワハラになるのか
- 第4章:無視された側に本当は何が起きているか
- ◾️6歳の僕が、自転車を降りて言ったこと
- ◾️傷は、本人の申告より大きいことがある
- ◾️無視されて落ち込むのは、弱いからじゃない
- ◾️「自分が悪いのかも」と考えるのは、おかしなことじゃない
- ◾️理由を探しても見つからないことがある
- 第5章:無視してくる人への対処法
- ◾️無視し返した半年で分かったこと
- ◾️やるなら「無視し返す」より「合わせにいかない」
- ◾️距離を置くのは、逃げじゃない
- ◾️どこから記録を残すか
- ◾️相談する順番
- あとがき:どうせ無視されるから、行かなくなった
- 📋 無視する人の末路についてよくある質問
第1章:無視する人の末路は孤立だけじゃない
まずは、よく言われる「孤立する」から見ていく。
これは当たっている。ただ、半分だ。
◾️「孤立する」は当たっているけど半分
人を無視し続ければ、周りは離れる。
困った時に手を貸してもらえなくなるし、情報も回ってこなくなる。それはそのとおりだと思う。
でも、無視する人が全員ひとりぼっちになるかというと、そんなことはない。
実際、僕をハブっていた従兄弟は、その後もちゃんと友達がいた。グループにも所属していたし、ひとりで過ごしているような人じゃなかった。
孤立する人もいる。しないまま大人になる人もいる。
じゃあ何が残るのか。そこに、たぶんもうひとつの末路がある。
◾️僕をハブった従兄弟が、大人になって言った一言
6歳くらいの頃、僕は隣に住んでいた従兄弟2人と一緒に、2kmほど離れた別の従兄弟の家へよく遊びに行っていた。
そして毎回、僕だけが仲間外れにされた。
家に上げてもらえないこともあって、3人が遊んでいる間、僕は自転車をこいで一人で帰った。
(ここは第4章でもう一度書く。今は末路の話を先に進めたい)
それから何年も経って、その従兄弟が言った。
「あいつ人をハブるから、もう付き合わない」
所属していたグループの中に、誰かを無視して自分の立場を保とうとする人がいたらしい。従兄弟はその人のことを、そう言って切っていた。
どの口が言うんだ、と思った。
でも面白いのは、そこじゃなかった。
◾️その場にいた全員が、黙っていた
その場には、昔まったく同じことをしていた従兄弟2人もいた。
僕を家に上げず、3人で遊んでいた側の2人だ。
誰も、何も言わなかった。
「お前が言う?」とツッコむ人も、気まずそうにする人もいなかった。ただ話が流れていっただけだった。
たぶんあの時、僕以外にも同じことを思っていた人はいたと思う。
でも誰も言わない。言うほどのことでもないし、言ったところで通じないと分かっているからだ。
これが、僕が見た末路だった。
罰が当たるわけでもない。孤立するわけでもない。
ただ、本人だけが気づいていない状態で、周りが静かに見ている。
派手な報いより、こっちの方が僕にはこたえるものに見えた。
◾️もうひとつの末路は「自分がやったことを覚えていないこと」
従兄弟は、嘘をついていたわけじゃないと思う。
たぶん本当に、心の底から「人をハブる奴は最低だ」と思って言っていた。
自分が同じことをしていた記憶が、そこにないからだ。
これはけっこう怖い話で、加害の記憶だけが抜け落ちると、本人は一生それを反省しないことになる。
反省しないから、同じことをされた時に本気で腹が立つ。そして本気で相手を責める。
因果応報と言えば因果応報だけど、本人にはその実感がない。
自分が投げたものが返ってきているのに、降ってきた石だと思っている。
◾️記憶を歪ませるのは性格じゃなく立場だった
ここまで読んで「そいつが特別ひどい人間なだけでは」と思った人もいると思う。
僕もずっとそう思っていた。
だけど調べてみたら、どうもそういう話じゃなかった。
🔬 同じ話でも、立場が変わると記憶が変わる
研究者たちが、参加者に同じ話を読ませてから、その話を自分の言葉で語り直させる実験をしている。片方には「あなたが被害者だったつもりで」、もう片方には「あなたが加害者だったつもりで」と伝えただけで、内容は同じものだ。
結果、加害者の立場になった人は、情状酌量できる事情や自分の善意を膨らませ、深刻さと自分の責任を示す事実を落とした。被害者の立場になった人は、深刻さに集中して、相手の良かった行動を軽く扱った。
そしてどちらも同じくらい歪んだ。「できるだけ正確に話してください」と指示しても、歪みは消えなかったという。
出典:Stillwell, A. M., & Baumeister, R. F. (1997). The Construction of Victim and Perpetrator Memories: Accuracy and Distortion in Role-Based Accounts. Personality and Social Psychology Bulletin, 23(11).
つまり、記憶を歪ませているのは性格じゃない。立場だ。
加害者の側に立つと、人は自然に自分の責任を軽くする方向へ記憶を編集してしまう。誰でもそうなる。
そしてこの研究が容赦ないのは、被害者の側も同じくらい歪むと言っているところだ。
されたことを大きく、相手の良かったところを小さく覚える。
だからこの記事も「あいつが100%悪い」では終われない。(自分で書いていてちょっと面白くないけど、そこを飛ばすと、この記事が批判している構造と同じことをやることになる)
末路の話に戻すと、こうなる。
無視する人は、悪人だから覚えていないんじゃない。加害者の立場にいると、覚えていられないのだ。
第2章:無視する人の心理は人が見ている時だけ発動する
ここからは、なぜ無視が始まるのかを書いていく。
先に結論を書くと、僕が見た限り、無視は「嫌い」から始まっていなかった。
◾️祖母の家で二人きりになった夜、ゲームボーイをやらせてくれた
7歳くらいの時に、なぜかその従兄弟と2人だけで祖母の家に泊まることになった。
理由は覚えていない。大人の都合だったんだと思う。
正直、行きたくなかった。またハブられるだけだと思っていたからだ。
ところがその夜、従兄弟は持ってきていたゲームボーイを、普通に僕にやらせてくれた。
取り上げるわけでもなく、嫌な顔をするわけでもない。
ただの、従兄弟だった。
子どもながらに、意味が分からなかった。
昨日まで家に上げてくれなかった人が、今日は普通に遊んでくれる。何が違うんだろうと思った。
違いは、たぶんひとつしかない。
見ている人が、いなかった。
◾️無視は「嫌い」じゃなく、見せるための行為だった
従兄弟は、僕のことが嫌いだったわけじゃなかったんだと思う。
嫌いなら、二人きりの夜こそ無視すればいい。誰にも止められないんだから。
でも実際は逆だった。人がいる時だけ無視して、いない時は普通だった。
ということは、あの無視の相手は僕じゃない。
その場にいた、他の2人に向けてやっていた。
「こいつは仲間に入れなくていい側だ」と示すことで、自分がどっち側にいるかを見せていた。
僕は、その見せ物の道具だったということになる。
(これに気づいたのはずっと後だ。6歳の僕はただ自分が嫌われていると思っていた)
そして大人になって職場を見ていると、これがそのまま起きている。
一対一だと普通に話すのに、人が集まると急に冷たくなる人。あれは気分の問題じゃなくて、観客がいるかどうかで切り替わっている。
◾️わざと無視する人を分けると3つになる
とはいえ、全部が見せ物というわけでもない。
僕が見てきた範囲だと、わざと無視する人はだいたい3つに分かれる。
1つ目は、感情で止まっているだけの人。
腹が立って口をきけなくなっているだけで、時間が経つと戻る。これは無視というより、こじれた不機嫌に近い。
2つ目が、見せるための無視だ。
従兄弟がやっていたのはこれで、目的は相手を傷つけることじゃなく、周りに自分の位置を示すこと。だから観客が消えると止まる。
いちばん長引くし、いちばん理不尽に感じるのもこれだと思う。
3つ目は、無視している自覚がない人。
単純に余裕がなくて、人の声が耳に入っていない。悪気はないけど、された側からは区別がつかない。
この3つは対処が違う。1つ目と3つ目は放っておけば戻ることがあるけど、2つ目は放っておいても終わらない。観客がいる限り続く。
◾️「自分にだけ無視される」が起きる理由
職場でいちばんしんどいのは、自分にだけ起きている時だと思う。
他の人には普通に話しているのに、自分の時だけ返事がない。
そうなると、どうしても「自分に原因がある」と考えてしまう。
だけど2つ目の型で考えると、話が変わる。
見せるための無視は、誰でもいいわけじゃないけど、あなたじゃなきゃいけない理由もない。
必要なのは「この人は下に置いていい」と周りに伝わる相手で、そこに選ばれる条件は、反撃してこなさそうとか、その場で立場が弱いとか、その程度のことだったりする。
6歳の僕が選ばれたのも、たぶん一番年下で、一番文句を言わなかったからだ。
能力でも性格でもない。配役だった。
◾️性別で分けても、たぶん意味がない
「無視する人の心理」を調べると、男性の場合・女性の場合、みたいに分けて説明されていることがある。
僕はそこにあまり意味を感じていない。
やり方の違いはあるかもしれない。表に出るか、笑顔のまま外すか、くらいの差はあると思う。
でも始まるスイッチはたぶん同じで、そこにいる観客の数だ。
男だから、女だから、で説明してしまうと、対処法が「そういう性別なんだから仕方ない」になってしまう。
それより「見せる相手がいるかどうか」で見た方が、話が早いと思う。
実際、観客のいない場所でだけ関係が普通に戻る、というのはよくある。
挨拶という形で出てくる場合は、もう少し損得が絡んでくる。そっちは別で書いた。
第3章:職場で無視する人に起きること
ここからは大人の話をする。
金属加工の工場でフォークリフトに乗っていた頃、僕はある先輩と半年間、お互いに無視し合った。
◾️仲が良かった先輩が、急に無視してくるようになった
それまでは普通に話す関係だった。
仕事の相談もしていたし、雑談もしていた。
それがある時から、話しかけても返ってこなくなった。
心当たりがまったくなかった。
何かやらかしたなら謝るけど、思い当たるものが本当に出てこない。
(今になって思えば、離婚したり友達に裏切られたりした後の時期で、僕自身の態度が前と変わっていた可能性はある。自分では気づいていなかっただけで)
◾️面倒だったから、僕も無視で返した
理由を聞きに行くこともできた。
でも、やらなかった。
単純に面倒だったからだ。
聞いたところで「別に」で終わる予感がしていたし、機嫌を取りにいく気にもならなかった。
だから僕も無視した。
それが半年続いた。
仕事に支障が出るところは最低限やるけど、それ以外は口をきかない。工場の中で、お互いがいないものとして動く半年だ。
フォークリフトが8台動いている現場で、そのうちの1台とだけ会話がない。
やりづらいに決まっている。
◾️折れたのは、先に無視してきた方だった
半年経って、先輩の方から話しかけてきた。
「俺になんかある?」
これが第一声だった。
僕は「別に。無視するけ無視しよるだけやけど」と返した。
先輩は「なんかあるやろ?」としつこかった。
でも本当に何もなかったので、「ない」で通した。
最後に先輩が言ったのが、これだ。
「仕事がやりづらいけ、前みたいにしよう」
これが、職場で無視する人に起きることだと思う。
仕返しをされるわけでも、上司に叱られるわけでもない。
ただ、自分の仕事がやりにくくなる。
そして耐えられなくなって、自分から折れにくる。
先に無視を始めた側が、先に困る。
◾️向こうは1回、こっちは半年
ずっと引っかかっているのが、あの第一声だ。
「俺になんかある?」
先に無視してきたのは先輩の方なのに、僕の方が何か抱えていることになっている。
あの時は「何言ってんだこの人」と思ったけど、調べてみたら、これもよくあることらしい。
🔬 被害者は積み重ねで覚え、加害者は1回しか見ていない
参加者164人に、自分が傷つけられた時の話と、自分が誰かを傷つけた時の話を語ってもらって比べた研究がある。
そこで分かったのは、被害を受けた側は「我慢を重ねた末に出てきた怒り」として語るのに対し、傷つけた側はその1回の出来事しか見ていないということだった。
だから傷つけた側は、相手の怒りを「そこまで怒ることか?」という過剰反応だと受け取ることになる。
出典:Baumeister, R. F., Stillwell, A. M., & Wotman, S. R. (1990). Victim and perpetrator accounts of interpersonal conflict: Autobiographical narratives about anger. Journal of Personality and Social Psychology, 59(5), 994-1005.
先輩から見れば、僕が無視してきた出来事が並んでいたんだと思う。
自分が始めたことは、記憶の中でとっくに畳まれている。
同じ半年を過ごしていたのに、長さの数え方が違っていた。
◾️僕の方が「覚えていない加害者」だった可能性もある
ここで、さっきの研究がこっちにも返ってくる。
立場が記憶を歪ませるなら、僕の記憶も歪んでいる。
「心当たりがない」と僕は言っているけど、心当たりを落としているだけかもしれない。
離婚したあとの時期に、僕の態度がどこか変わっていて、先輩はそれを「無視された」と受け取った。その可能性は普通にある。
だとしたら、先に無視したのは僕の方で、あの「俺になんかある?」は正当な問いかけだったことになる。
正直、今でも分からない。
ただ、分からないということだけは書いておきたい。
(自分を悪く書きたいわけじゃない。ここを飛ばすと、この記事が「相手を叩くための記事」になってしまうからだ)
◾️そして1ヶ月で、元に戻った
話がまとまって、僕たちは元通りになろうとした。
1ヶ月くらいは実際に戻った。
前みたいに話したし、仕事も手伝った。
でも、そこからまた態度が変わり始めた。
今度は僕から聞いた。「何かしましたか?」
返ってきたのは「別に」だった。
そのくせ、また無視が始まった。
だから僕も、また無視に戻った。
ここが一番大事なところだと思う。
あの人は、無視をやめたかったわけじゃない。仕事がやりづらかっただけだ。
だから仕事が回るようになったら、また元に戻った。
謝罪もなかったし、理由の説明もなかった。
1回目の「前みたいにしよう」で全部解決したと思った僕が、たぶん甘かった。
◾️無視はパワハラになるのか
ここは、はっきりさせておきたい。
厚生労働省は職場のパワハラを6つの型に分けていて、その3つ目が「人間関係からの切り離し」だ。中身は「隔離や仲間外れ、無視など個人を疎外するパワハラ」とされている。
つまり、無視はそこに入っている。
ただし、ここから先が大事だ。
⚖️ パワハラは3つの要素を「すべて」満たす必要がある
①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるもの。この3つを全部満たすものが、職場のパワハラとされている。
そして6つの型の例には「優越的な関係を背景として行われたものであることが前提です」という但し書きがついている。
ただし①の「優越的な関係」には、同僚や部下からの集団による行為で、抵抗や拒絶が困難なものも含まれる。相手が上司でなくても、集団で無視されているなら当てはまる場合がある。
頻度や継続性も考慮されるが、強い苦痛を与える態様なら1回でも該当しうる、とも書かれている。
出典:厚生労働省「あかるい職場応援団」パワーハラスメントとは/事業主が講ずべき措置等についての指針(令和2年厚生労働省告示第5号)
よく「無視されたらパワハラだから訴えられる」と書いてあるのを見るけど、そこまで単純じゃない。
たとえば僕と先輩のケースは、かなり微妙だと思う。
先輩という上下はあるけど、業務上の話じゃないし、僕も無視し返している。
一方で、集団で無視されている場合は状況がまったく違う。相手が同僚でも当てはまりうるし、抵抗できないなら余計にそうなる。
自分がどっちなのかを知っておくのは、無駄じゃないと思う。
法的な線引きをもう少し細かく書いたものがあるので、気になる人はこちらへ。
第4章:無視された側に本当は何が起きているか
ここからは、される側の話をする。
先に言っておくと、僕はここを書くために調べ物をした。自分の体感が正しいのか分からなかったからだ。
◾️6歳の僕が、自転車を降りて言ったこと
第1章に書いた、一人で帰った日の話に戻る。
その帰り道で、僕は祖母の友達を見かけたらしい。
そして、わざわざ自転車から降りて、こう話したそうだ。
「ぼくね、なにも悪いことしてないんだよ」
ここで大事なのは「らしい」「そうだ」の部分だ。
僕はこの出来事を、まったく覚えていない。
知ったのは高校生の時で、祖母から「友達が言ってた」と聞かされた。
十年近く経ってから、自分がそんなことをしていたと知った。
6歳の僕は、誰かに言わずにいられなかったんだと思う。
それも、家族じゃなくて、たまたま道で会った大人に。
自転車を降りてまで。
(この話を聞いた時、なんとも言えない気持ちになった。かわいそうというより、他人事みたいな感じだった)
◾️傷は、本人の申告より大きいことがある
もし高校生の時にあの話を聞いていなかったら、僕はたぶん今も「別に平気だった」と思っている。
実際、聞かされるまではそのつもりだった。
でも、6歳の僕は明らかに平気じゃなかった。
本人が覚えていなくても、周りが覚えていることがある。
だから今、職場で無視されていて「これくらいで落ち込む自分が情けない」と思っている人がいるなら、その自己申告はあてにならないかもしれない。
平気だと思っているだけで、実際は削れていることがある。
◾️無視されて落ち込むのは、弱いからじゃない
これは僕の体感の話じゃなくて、実験で確かめられている。
🔬 相手がコンピュータでも、人は無視されると削れる
画面の中でボールをパスし合うだけの簡単なゲームで、参加者を途中から仲間外れにするという実験がある。
その結果、所属している感覚・自分で状況をコントロールできる感覚・自尊心・自分がここにいる意味、この4つがはっきり下がった。
しかも驚くのはここからで、「相手は人間ではなくコンピュータです」と伝えられていても、同じように下がったという。
出典:Zadro, L., Williams, K. D., & Richardson, R. (2004). How low can you go? Ostracism by a computer is sufficient to lower self-reported levels of belonging, control, self-esteem, and meaningful existence. Journal of Experimental Social Psychology, 40(4), 560-567.
相手が機械だと分かっていて、ただのボール投げゲームで、一度きりでも効く。
それが、毎日顔を合わせる職場で、実在の人間から、何ヶ月も続く。
効かないわけがない。
「気にしすぎ」でも「メンタルが弱い」でもなくて、人間がそういうつくりになっているという話だ。
◾️「自分が悪いのかも」と考えるのは、おかしなことじゃない
無視されると、ほとんどの人が理由を探し始める。
あの時の言い方が悪かったのかな、とか。あの日の態度かな、とか。
自分を責めているようで、あれは頭が原因を探しているだけだ。
原因が分かれば直せる。直せば終わる。だから探す。
まともな反応だと思う。
問題は、探しても見つからない場合があることだ。
◾️理由を探しても見つからないことがある
第2章に書いた「見せるための無視」だと、理由はあなたの中にない。
その場に観客がいたから始まっただけなので、あなたが何を直しても終わらない。
僕の先輩の件も、結局最後まで理由は出てこなかった。
2回聞いて、2回とも「別に」だった。
理由がないんじゃなくて、本人にも説明できないことがある。
加害の記憶が畳まれていくなら、自分がなぜ始めたかも、途中から分からなくなるはずだ。
だから、探すのをどこかでやめていい。
見つからないのは、あなたの努力が足りないからじゃない。
他人と比べて落ち込んでしまう時のことは、こっちに書いた。
第5章:無視してくる人への対処法
最後に、じゃあどうするかを書く。
僕は無視し返す側もやったので、その結果も含めて正直に書いておきたい。
◾️無視し返した半年で分かったこと
「無視されたら無視し返せ」と書いてある記事は多い。
実際にやった結果を言うと、効きはする。ただし、おすすめはしない。
効いた部分から書くと、相手が折れてきた。仕事がやりづらくなって、向こうから話しかけてきた。
それと、こっちが消耗しなかった。機嫌を取りに行かなかったので、無駄に落ち込む時間がなかった。
おすすめしない理由は、半年かかったからだ。
その半年、仕事は普通にやりにくかった。聞けば早いことを聞けないし、確認も回り道になる。
しかも1ヶ月で元に戻った。半年かけて、1ヶ月しかもたなかった。
費用対効果でいうと、たぶん割に合っていない。
それに、僕の場合は「面倒だからやらない」であって、相手をやり返してやろうと思っていたわけじゃない。
ここの差は大きいと思う。やり返してやろうと思って無視すると、自分の頭の中に相手が居座る。
それはもう、無視できていない。
◾️やるなら「無視し返す」より「合わせにいかない」
僕がやっていたのは、正確には無視し返すじゃなかったと思う。
挨拶も業務連絡も普通にしていた。ただ、それ以外を足しに行かなかっただけだ。
機嫌を伺いに行かない。理由を探りに行かない。空気を読んで先回りしない。
これだと、周りから見て自分が悪者にならない。
見せるための無視は観客に向けてやっているので、観客の目に「無視してるのはあっちだな」と映る状態を保っておくのは、たぶん一番強い。
感情的にやり返すと、ここが崩れる。
◾️距離を置くのは、逃げじゃない
6歳の話に戻ると、僕は結局その従兄弟の家に行かなくなった。
どうせ無視されるからだ。
親族で集まることがあっても、距離を取るようになった。
これを逃げだと思ったことは一度もない。
行けば毎回削られると分かっている場所に、わざわざ通う理由がない。
ただ、職場だとそう簡単にはいかない。行かない選択が取れないから、みんな困っている。
だから職場の場合は、物理的な距離じゃなく、期待の距離を置くことになると思う。
この人とは、仕事が回ればそれでいい。
それ以上を求めない、と決めてしまう。
薄情に聞こえるかもしれないけど、無理に関係を戻そうとして削れるより、ずっとましだと思う。
◾️どこから記録を残すか
ここは、無視の中身で分かれると思っている。
1対1で口をきいてもらえないだけなら、正直そこまでのことにはなりにくい。
ただ、次のどれかが混ざってきたら話が変わる。
・集団でやられている(第3章の「優越的な関係」に当たりうる)
・業務に必要な連絡が回ってこない(仕事の妨害になっている)
・会議や作業から外されている(隔離に近づいている)
このあたりが出てきたら、日付と、誰が、何を、という程度でいいので残しておく方がいい。
僕は弁護士じゃないので、これがどう判断されるかまでは書けない。
ただ、相談する時に「いつ・何が」が言えるかどうかで、話の進み方が変わるのは間違いないと思う。
(記憶は立場で歪む、という話をこの記事でしたばかりだ。自分の記憶も例外じゃない)
◾️相談する順番
いきなり大きいところに行かなくていい。
まずは、社内の相談窓口があるならそこ。
無い、あるいは相談したところで動かないと分かっているなら、社外に行く。厚生労働省は都道府県労働局に総合労働相談コーナーを置いていて、そこは無料で使える。
大事なのは、解決してもらうために行くんじゃなく、選択肢を知るために行くと考えることだと思う。
「どうにかしてもらえる」と期待して行くと、動かなかった時にもう一段落ち込む。
それと、辞めるという選択肢は最初から持っておいていい。
使わなくていいけど、持っているだけで景色が変わる。
やり返す方法を考えている人は、先にこっちを読んでほしい。やっていいことと、絶対にやってはいけないことを分けて書いてある。
あとがき:どうせ無視されるから、行かなくなった
従兄弟を恨んではいない。
中学以降もほとんど関わりがないけど、それは恨んでいるからじゃなくて、単に興味がないからだ。
子どもの頃にあったことを、大人になってまで持ち歩くのはしんどい。
だから僕は、行かなくなった。それだけだ。
そして、距離を置いて困ったことは、今のところ特にない。
先輩の方も同じで、結局あの関係は戻らなかった。
それでも仕事は回ったし、僕はその後もフォークリフトに乗り続けた。
無視する人の末路を知りたくてここまで読んでくれた人に、最後に書いておきたいことがある。
あの人がどうなるかは、たぶんあなたが見届けなくていい。
孤立するかもしれないし、しないかもしれない。自分がやったことを忘れて、いつか誰かに同じことをされて怒るのかもしれない。
ただ、それを確認するまであの人の近くにいる必要は、どこにもない。
今日、あの人の機嫌を一回だけ確認しにいくのをやめてみる。
それくらいから始めていいと思う 🦥
📋 無視する人の末路についてよくある質問
無視する人の末路は、本当に孤立ですか?
わざと無視してくる人の心理は何ですか?
職場での無視はパワハラになりますか?
無視されたら、無視し返していいですか?
職場で自分だけ無視されるのはなぜですか?
無視されて落ち込むのは、弱いからですか?
🦥 末路図鑑シリーズ
「あの人はこの先どうなるのか」を、心理学と実体験から書いています。気になるものからどうぞ。
- 優しい人を怒らせた人の末路
- 「いい人」を演じ続ける人の末路
- 理不尽な人の末路
- 人を選んで挨拶する人の末路
- 卑怯な人・ずるい人の末路
- 人間関係を引っ掻き回す人の末路
- 調子に乗ってる人の末路
- 暴言を吐く人の末路
- 優しすぎる人の末路
- パワハラに仕返しした人と会社の末路
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