無視する人の末路は孤立だけじゃない|人が見ている時だけハブる人の心理

「話しかけても返事がない」


「自分にだけ、目を合わせてくれない」


そんな職場にいると、朝の一歩が重くなる。


先に書いておくと、無視されている側が悪いことなんて、まずない。


無視する人の末路は「孤立」だとよく言われる。それは間違っていないけど、それだけじゃなかった。


僕が見たのは、もう少し静かなものだ。


自分がやったことを忘れて、同じことをされた時だけ怒るようになる。そしてそれを、周りは黙って見ている。


こんにちは。ナマケ者です。

この記事は、無視してくる相手に仕返しをするための記事じゃない。むしろ、そこに時間を使わなくて済むように書いた。

僕は6歳の頃、従兄弟にハブられていた。大人になってからは、工場の先輩と半年間お互いに無視し合ったこともある。

その両方で見たものを、心理学の研究と厚生労働省の資料を確認したうえで書いていく。


ただ、この話には続きがある。


なぜあの人は、二人きりの時は普通に話すのに、人が集まった途端に無視を始めるんだろうか?


もくじ(タップで開閉)


第1章:無視する人の末路は孤立だけじゃない

まずは、よく言われる「孤立する」から見ていく。


これは当たっている。ただ、半分だ。

◾️「孤立する」は当たっているけど半分

人を無視し続ければ、周りは離れる。


困った時に手を貸してもらえなくなるし、情報も回ってこなくなる。それはそのとおりだと思う。


でも、無視する人が全員ひとりぼっちになるかというと、そんなことはない。


実際、僕をハブっていた従兄弟は、その後もちゃんと友達がいた。グループにも所属していたし、ひとりで過ごしているような人じゃなかった。


孤立する人もいる。しないまま大人になる人もいる。


じゃあ何が残るのか。そこに、たぶんもうひとつの末路がある。

◾️僕をハブった従兄弟が、大人になって言った一言

6歳くらいの頃、僕は隣に住んでいた従兄弟2人と一緒に、2kmほど離れた別の従兄弟の家へよく遊びに行っていた。


そして毎回、僕だけが仲間外れにされた。


家に上げてもらえないこともあって、3人が遊んでいる間、僕は自転車をこいで一人で帰った。


(ここは第4章でもう一度書く。今は末路の話を先に進めたい)


それから何年も経って、その従兄弟が言った。


「あいつ人をハブるから、もう付き合わない」


所属していたグループの中に、誰かを無視して自分の立場を保とうとする人がいたらしい。従兄弟はその人のことを、そう言って切っていた。


どの口が言うんだ、と思った。


でも面白いのは、そこじゃなかった。

◾️その場にいた全員が、黙っていた

その場には、昔まったく同じことをしていた従兄弟2人もいた。


僕を家に上げず、3人で遊んでいた側の2人だ。


誰も、何も言わなかった。


「お前が言う?」とツッコむ人も、気まずそうにする人もいなかった。ただ話が流れていっただけだった。


たぶんあの時、僕以外にも同じことを思っていた人はいたと思う。


でも誰も言わない。言うほどのことでもないし、言ったところで通じないと分かっているからだ。


これが、僕が見た末路だった。


罰が当たるわけでもない。孤立するわけでもない。


ただ、本人だけが気づいていない状態で、周りが静かに見ている。


派手な報いより、こっちの方が僕にはこたえるものに見えた。

◾️もうひとつの末路は「自分がやったことを覚えていないこと」

従兄弟は、嘘をついていたわけじゃないと思う。


たぶん本当に、心の底から「人をハブる奴は最低だ」と思って言っていた。


自分が同じことをしていた記憶が、そこにないからだ。


これはけっこう怖い話で、加害の記憶だけが抜け落ちると、本人は一生それを反省しないことになる。


反省しないから、同じことをされた時に本気で腹が立つ。そして本気で相手を責める。


因果応報と言えば因果応報だけど、本人にはその実感がない。


自分が投げたものが返ってきているのに、降ってきた石だと思っている。

◾️記憶を歪ませるのは性格じゃなく立場だった

ここまで読んで「そいつが特別ひどい人間なだけでは」と思った人もいると思う。


僕もずっとそう思っていた。


だけど調べてみたら、どうもそういう話じゃなかった。

🔬 同じ話でも、立場が変わると記憶が変わる

研究者たちが、参加者に同じ話を読ませてから、その話を自分の言葉で語り直させる実験をしている。片方には「あなたが被害者だったつもりで」、もう片方には「あなたが加害者だったつもりで」と伝えただけで、内容は同じものだ。

結果、加害者の立場になった人は、情状酌量できる事情や自分の善意を膨らませ、深刻さと自分の責任を示す事実を落とした。被害者の立場になった人は、深刻さに集中して、相手の良かった行動を軽く扱った。

そしてどちらも同じくらい歪んだ。「できるだけ正確に話してください」と指示しても、歪みは消えなかったという。

出典:Stillwell, A. M., & Baumeister, R. F. (1997). The Construction of Victim and Perpetrator Memories: Accuracy and Distortion in Role-Based Accounts. Personality and Social Psychology Bulletin, 23(11).


つまり、記憶を歪ませているのは性格じゃない。立場だ。


加害者の側に立つと、人は自然に自分の責任を軽くする方向へ記憶を編集してしまう。誰でもそうなる。


そしてこの研究が容赦ないのは、被害者の側も同じくらい歪むと言っているところだ。


されたことを大きく、相手の良かったところを小さく覚える。


だからこの記事も「あいつが100%悪い」では終われない。(自分で書いていてちょっと面白くないけど、そこを飛ばすと、この記事が批判している構造と同じことをやることになる)


末路の話に戻すと、こうなる。


無視する人は、悪人だから覚えていないんじゃない。加害者の立場にいると、覚えていられないのだ。


第2章:無視する人の心理は人が見ている時だけ発動する

ここからは、なぜ無視が始まるのかを書いていく。


先に結論を書くと、僕が見た限り、無視は「嫌い」から始まっていなかった。

◾️祖母の家で二人きりになった夜、ゲームボーイをやらせてくれた

7歳くらいの時に、なぜかその従兄弟と2人だけで祖母の家に泊まることになった。


理由は覚えていない。大人の都合だったんだと思う。


正直、行きたくなかった。またハブられるだけだと思っていたからだ。


ところがその夜、従兄弟は持ってきていたゲームボーイを、普通に僕にやらせてくれた。


取り上げるわけでもなく、嫌な顔をするわけでもない。


ただの、従兄弟だった。


子どもながらに、意味が分からなかった。


昨日まで家に上げてくれなかった人が、今日は普通に遊んでくれる。何が違うんだろうと思った。


違いは、たぶんひとつしかない。


見ている人が、いなかった。

◾️無視は「嫌い」じゃなく、見せるための行為だった

従兄弟は、僕のことが嫌いだったわけじゃなかったんだと思う。


嫌いなら、二人きりの夜こそ無視すればいい。誰にも止められないんだから。


でも実際は逆だった。人がいる時だけ無視して、いない時は普通だった。


ということは、あの無視の相手は僕じゃない。


その場にいた、他の2人に向けてやっていた。


「こいつは仲間に入れなくていい側だ」と示すことで、自分がどっち側にいるかを見せていた。


僕は、その見せ物の道具だったということになる。


(これに気づいたのはずっと後だ。6歳の僕はただ自分が嫌われていると思っていた)


そして大人になって職場を見ていると、これがそのまま起きている。


一対一だと普通に話すのに、人が集まると急に冷たくなる人。あれは気分の問題じゃなくて、観客がいるかどうかで切り替わっている。

◾️わざと無視する人を分けると3つになる

とはいえ、全部が見せ物というわけでもない。


僕が見てきた範囲だと、わざと無視する人はだいたい3つに分かれる。


1つ目は、感情で止まっているだけの人。


腹が立って口をきけなくなっているだけで、時間が経つと戻る。これは無視というより、こじれた不機嫌に近い。


2つ目が、見せるための無視だ。


従兄弟がやっていたのはこれで、目的は相手を傷つけることじゃなく、周りに自分の位置を示すこと。だから観客が消えると止まる。


いちばん長引くし、いちばん理不尽に感じるのもこれだと思う。


3つ目は、無視している自覚がない人。


単純に余裕がなくて、人の声が耳に入っていない。悪気はないけど、された側からは区別がつかない。


この3つは対処が違う。1つ目と3つ目は放っておけば戻ることがあるけど、2つ目は放っておいても終わらない。観客がいる限り続く。

◾️「自分にだけ無視される」が起きる理由

職場でいちばんしんどいのは、自分にだけ起きている時だと思う。


他の人には普通に話しているのに、自分の時だけ返事がない。


そうなると、どうしても「自分に原因がある」と考えてしまう。


だけど2つ目の型で考えると、話が変わる。


見せるための無視は、誰でもいいわけじゃないけど、あなたじゃなきゃいけない理由もない。


必要なのは「この人は下に置いていい」と周りに伝わる相手で、そこに選ばれる条件は、反撃してこなさそうとか、その場で立場が弱いとか、その程度のことだったりする。


6歳の僕が選ばれたのも、たぶん一番年下で、一番文句を言わなかったからだ。


能力でも性格でもない。配役だった。

◾️性別で分けても、たぶん意味がない

「無視する人の心理」を調べると、男性の場合・女性の場合、みたいに分けて説明されていることがある。


僕はそこにあまり意味を感じていない。


やり方の違いはあるかもしれない。表に出るか、笑顔のまま外すか、くらいの差はあると思う。


でも始まるスイッチはたぶん同じで、そこにいる観客の数だ。


男だから、女だから、で説明してしまうと、対処法が「そういう性別なんだから仕方ない」になってしまう。


それより「見せる相手がいるかどうか」で見た方が、話が早いと思う。


実際、観客のいない場所でだけ関係が普通に戻る、というのはよくある。


挨拶という形で出てくる場合は、もう少し損得が絡んでくる。そっちは別で書いた。

▶︎人を選んで挨拶する人の末路を読む


第3章:職場で無視する人に起きること

ここからは大人の話をする。


金属加工の工場でフォークリフトに乗っていた頃、僕はある先輩と半年間、お互いに無視し合った。

◾️仲が良かった先輩が、急に無視してくるようになった

それまでは普通に話す関係だった。


仕事の相談もしていたし、雑談もしていた。


それがある時から、話しかけても返ってこなくなった。


心当たりがまったくなかった。


何かやらかしたなら謝るけど、思い当たるものが本当に出てこない。


(今になって思えば、離婚したり友達に裏切られたりした後の時期で、僕自身の態度が前と変わっていた可能性はある。自分では気づいていなかっただけで)

◾️面倒だったから、僕も無視で返した

理由を聞きに行くこともできた。


でも、やらなかった。


単純に面倒だったからだ。


聞いたところで「別に」で終わる予感がしていたし、機嫌を取りにいく気にもならなかった。


だから僕も無視した。


それが半年続いた。


仕事に支障が出るところは最低限やるけど、それ以外は口をきかない。工場の中で、お互いがいないものとして動く半年だ。


フォークリフトが8台動いている現場で、そのうちの1台とだけ会話がない。


やりづらいに決まっている。

◾️折れたのは、先に無視してきた方だった

半年経って、先輩の方から話しかけてきた。


「俺になんかある?」


これが第一声だった。


僕は「別に。無視するけ無視しよるだけやけど」と返した。


先輩は「なんかあるやろ?」としつこかった。


でも本当に何もなかったので、「ない」で通した。


最後に先輩が言ったのが、これだ。


「仕事がやりづらいけ、前みたいにしよう」


これが、職場で無視する人に起きることだと思う。


仕返しをされるわけでも、上司に叱られるわけでもない。


ただ、自分の仕事がやりにくくなる。


そして耐えられなくなって、自分から折れにくる。


先に無視を始めた側が、先に困る。

◾️向こうは1回、こっちは半年

ずっと引っかかっているのが、あの第一声だ。


「俺になんかある?」


先に無視してきたのは先輩の方なのに、僕の方が何か抱えていることになっている。


あの時は「何言ってんだこの人」と思ったけど、調べてみたら、これもよくあることらしい。

🔬 被害者は積み重ねで覚え、加害者は1回しか見ていない

参加者164人に、自分が傷つけられた時の話と、自分が誰かを傷つけた時の話を語ってもらって比べた研究がある。

そこで分かったのは、被害を受けた側は「我慢を重ねた末に出てきた怒り」として語るのに対し、傷つけた側はその1回の出来事しか見ていないということだった。

だから傷つけた側は、相手の怒りを「そこまで怒ることか?」という過剰反応だと受け取ることになる。

出典:Baumeister, R. F., Stillwell, A. M., & Wotman, S. R. (1990). Victim and perpetrator accounts of interpersonal conflict: Autobiographical narratives about anger. Journal of Personality and Social Psychology, 59(5), 994-1005.


先輩から見れば、僕が無視してきた出来事が並んでいたんだと思う。


自分が始めたことは、記憶の中でとっくに畳まれている。


同じ半年を過ごしていたのに、長さの数え方が違っていた。

◾️僕の方が「覚えていない加害者」だった可能性もある

ここで、さっきの研究がこっちにも返ってくる。


立場が記憶を歪ませるなら、僕の記憶も歪んでいる。


「心当たりがない」と僕は言っているけど、心当たりを落としているだけかもしれない。


離婚したあとの時期に、僕の態度がどこか変わっていて、先輩はそれを「無視された」と受け取った。その可能性は普通にある。


だとしたら、先に無視したのは僕の方で、あの「俺になんかある?」は正当な問いかけだったことになる。


正直、今でも分からない。


ただ、分からないということだけは書いておきたい。


(自分を悪く書きたいわけじゃない。ここを飛ばすと、この記事が「相手を叩くための記事」になってしまうからだ)

◾️そして1ヶ月で、元に戻った

話がまとまって、僕たちは元通りになろうとした。


1ヶ月くらいは実際に戻った。


前みたいに話したし、仕事も手伝った。


でも、そこからまた態度が変わり始めた。


今度は僕から聞いた。「何かしましたか?」


返ってきたのは「別に」だった。


そのくせ、また無視が始まった。


だから僕も、また無視に戻った。


ここが一番大事なところだと思う。


あの人は、無視をやめたかったわけじゃない。仕事がやりづらかっただけだ。


だから仕事が回るようになったら、また元に戻った。


謝罪もなかったし、理由の説明もなかった。


1回目の「前みたいにしよう」で全部解決したと思った僕が、たぶん甘かった。

◾️無視はパワハラになるのか

ここは、はっきりさせておきたい。


厚生労働省は職場のパワハラを6つの型に分けていて、その3つ目が「人間関係からの切り離し」だ。中身は「隔離や仲間外れ、無視など個人を疎外するパワハラ」とされている。


つまり、無視はそこに入っている。


ただし、ここから先が大事だ。

⚖️ パワハラは3つの要素を「すべて」満たす必要がある

①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるもの。この3つを全部満たすものが、職場のパワハラとされている。

そして6つの型の例には「優越的な関係を背景として行われたものであることが前提です」という但し書きがついている。

ただし①の「優越的な関係」には、同僚や部下からの集団による行為で、抵抗や拒絶が困難なものも含まれる。相手が上司でなくても、集団で無視されているなら当てはまる場合がある。

頻度や継続性も考慮されるが、強い苦痛を与える態様なら1回でも該当しうる、とも書かれている。

出典:厚生労働省「あかるい職場応援団」パワーハラスメントとは/事業主が講ずべき措置等についての指針(令和2年厚生労働省告示第5号)


よく「無視されたらパワハラだから訴えられる」と書いてあるのを見るけど、そこまで単純じゃない。


たとえば僕と先輩のケースは、かなり微妙だと思う。


先輩という上下はあるけど、業務上の話じゃないし、僕も無視し返している。


一方で、集団で無視されている場合は状況がまったく違う。相手が同僚でも当てはまりうるし、抵抗できないなら余計にそうなる。


自分がどっちなのかを知っておくのは、無駄じゃないと思う。


法的な線引きをもう少し細かく書いたものがあるので、気になる人はこちらへ。

▶︎無視がパワハラになる線引きを読む


第4章:無視された側に本当は何が起きているか

ここからは、される側の話をする。


先に言っておくと、僕はここを書くために調べ物をした。自分の体感が正しいのか分からなかったからだ。

◾️6歳の僕が、自転車を降りて言ったこと

第1章に書いた、一人で帰った日の話に戻る。


その帰り道で、僕は祖母の友達を見かけたらしい。


そして、わざわざ自転車から降りて、こう話したそうだ。


「ぼくね、なにも悪いことしてないんだよ」


ここで大事なのは「らしい」「そうだ」の部分だ。


僕はこの出来事を、まったく覚えていない。


知ったのは高校生の時で、祖母から「友達が言ってた」と聞かされた。


十年近く経ってから、自分がそんなことをしていたと知った。


6歳の僕は、誰かに言わずにいられなかったんだと思う。


それも、家族じゃなくて、たまたま道で会った大人に。


自転車を降りてまで。


(この話を聞いた時、なんとも言えない気持ちになった。かわいそうというより、他人事みたいな感じだった)

◾️傷は、本人の申告より大きいことがある

もし高校生の時にあの話を聞いていなかったら、僕はたぶん今も「別に平気だった」と思っている。


実際、聞かされるまではそのつもりだった。


でも、6歳の僕は明らかに平気じゃなかった。


本人が覚えていなくても、周りが覚えていることがある。


だから今、職場で無視されていて「これくらいで落ち込む自分が情けない」と思っている人がいるなら、その自己申告はあてにならないかもしれない。


平気だと思っているだけで、実際は削れていることがある。

◾️無視されて落ち込むのは、弱いからじゃない

これは僕の体感の話じゃなくて、実験で確かめられている。

🔬 相手がコンピュータでも、人は無視されると削れる

画面の中でボールをパスし合うだけの簡単なゲームで、参加者を途中から仲間外れにするという実験がある。

その結果、所属している感覚・自分で状況をコントロールできる感覚・自尊心・自分がここにいる意味、この4つがはっきり下がった

しかも驚くのはここからで、「相手は人間ではなくコンピュータです」と伝えられていても、同じように下がったという。

出典:Zadro, L., Williams, K. D., & Richardson, R. (2004). How low can you go? Ostracism by a computer is sufficient to lower self-reported levels of belonging, control, self-esteem, and meaningful existence. Journal of Experimental Social Psychology, 40(4), 560-567.


相手が機械だと分かっていて、ただのボール投げゲームで、一度きりでも効く。


それが、毎日顔を合わせる職場で、実在の人間から、何ヶ月も続く。


効かないわけがない。


「気にしすぎ」でも「メンタルが弱い」でもなくて、人間がそういうつくりになっているという話だ。

◾️「自分が悪いのかも」と考えるのは、おかしなことじゃない

無視されると、ほとんどの人が理由を探し始める。


あの時の言い方が悪かったのかな、とか。あの日の態度かな、とか。


自分を責めているようで、あれは頭が原因を探しているだけだ。


原因が分かれば直せる。直せば終わる。だから探す。


まともな反応だと思う。


問題は、探しても見つからない場合があることだ。

◾️理由を探しても見つからないことがある

第2章に書いた「見せるための無視」だと、理由はあなたの中にない。


その場に観客がいたから始まっただけなので、あなたが何を直しても終わらない。


僕の先輩の件も、結局最後まで理由は出てこなかった。


2回聞いて、2回とも「別に」だった。


理由がないんじゃなくて、本人にも説明できないことがある。


加害の記憶が畳まれていくなら、自分がなぜ始めたかも、途中から分からなくなるはずだ。


だから、探すのをどこかでやめていい。


見つからないのは、あなたの努力が足りないからじゃない。


他人と比べて落ち込んでしまう時のことは、こっちに書いた。

▶︎人の機嫌に敏感で疲れる人へ


第5章:無視してくる人への対処法

最後に、じゃあどうするかを書く。


僕は無視し返す側もやったので、その結果も含めて正直に書いておきたい。

◾️無視し返した半年で分かったこと

「無視されたら無視し返せ」と書いてある記事は多い。


実際にやった結果を言うと、効きはする。ただし、おすすめはしない。


効いた部分から書くと、相手が折れてきた。仕事がやりづらくなって、向こうから話しかけてきた。


それと、こっちが消耗しなかった。機嫌を取りに行かなかったので、無駄に落ち込む時間がなかった。


おすすめしない理由は、半年かかったからだ。


その半年、仕事は普通にやりにくかった。聞けば早いことを聞けないし、確認も回り道になる。


しかも1ヶ月で元に戻った。半年かけて、1ヶ月しかもたなかった。


費用対効果でいうと、たぶん割に合っていない。


それに、僕の場合は「面倒だからやらない」であって、相手をやり返してやろうと思っていたわけじゃない。


ここの差は大きいと思う。やり返してやろうと思って無視すると、自分の頭の中に相手が居座る。


それはもう、無視できていない。

◾️やるなら「無視し返す」より「合わせにいかない」

僕がやっていたのは、正確には無視し返すじゃなかったと思う。


挨拶も業務連絡も普通にしていた。ただ、それ以外を足しに行かなかっただけだ。


機嫌を伺いに行かない。理由を探りに行かない。空気を読んで先回りしない。


これだと、周りから見て自分が悪者にならない。


見せるための無視は観客に向けてやっているので、観客の目に「無視してるのはあっちだな」と映る状態を保っておくのは、たぶん一番強い。


感情的にやり返すと、ここが崩れる。

◾️距離を置くのは、逃げじゃない

6歳の話に戻ると、僕は結局その従兄弟の家に行かなくなった。


どうせ無視されるからだ。


親族で集まることがあっても、距離を取るようになった。


これを逃げだと思ったことは一度もない。


行けば毎回削られると分かっている場所に、わざわざ通う理由がない。


ただ、職場だとそう簡単にはいかない。行かない選択が取れないから、みんな困っている。


だから職場の場合は、物理的な距離じゃなく、期待の距離を置くことになると思う。


この人とは、仕事が回ればそれでいい。


それ以上を求めない、と決めてしまう。


薄情に聞こえるかもしれないけど、無理に関係を戻そうとして削れるより、ずっとましだと思う。

◾️どこから記録を残すか

ここは、無視の中身で分かれると思っている。


1対1で口をきいてもらえないだけなら、正直そこまでのことにはなりにくい。


ただ、次のどれかが混ざってきたら話が変わる。


集団でやられている(第3章の「優越的な関係」に当たりうる)
業務に必要な連絡が回ってこない(仕事の妨害になっている)
会議や作業から外されている(隔離に近づいている)


このあたりが出てきたら、日付と、誰が、何を、という程度でいいので残しておく方がいい。


僕は弁護士じゃないので、これがどう判断されるかまでは書けない。


ただ、相談する時に「いつ・何が」が言えるかどうかで、話の進み方が変わるのは間違いないと思う。


(記憶は立場で歪む、という話をこの記事でしたばかりだ。自分の記憶も例外じゃない)

◾️相談する順番

いきなり大きいところに行かなくていい。


まずは、社内の相談窓口があるならそこ。


無い、あるいは相談したところで動かないと分かっているなら、社外に行く。厚生労働省は都道府県労働局に総合労働相談コーナーを置いていて、そこは無料で使える。


大事なのは、解決してもらうために行くんじゃなく、選択肢を知るために行くと考えることだと思う。


「どうにかしてもらえる」と期待して行くと、動かなかった時にもう一段落ち込む。


それと、辞めるという選択肢は最初から持っておいていい。


使わなくていいけど、持っているだけで景色が変わる。


やり返す方法を考えている人は、先にこっちを読んでほしい。やっていいことと、絶対にやってはいけないことを分けて書いてある。

▶︎会社に合法的に仕返しする方法を知る


あとがき:どうせ無視されるから、行かなくなった

従兄弟を恨んではいない。


中学以降もほとんど関わりがないけど、それは恨んでいるからじゃなくて、単に興味がないからだ。


子どもの頃にあったことを、大人になってまで持ち歩くのはしんどい。


だから僕は、行かなくなった。それだけだ。


そして、距離を置いて困ったことは、今のところ特にない。


先輩の方も同じで、結局あの関係は戻らなかった。


それでも仕事は回ったし、僕はその後もフォークリフトに乗り続けた。


無視する人の末路を知りたくてここまで読んでくれた人に、最後に書いておきたいことがある。


あの人がどうなるかは、たぶんあなたが見届けなくていい。


孤立するかもしれないし、しないかもしれない。自分がやったことを忘れて、いつか誰かに同じことをされて怒るのかもしれない。


ただ、それを確認するまであの人の近くにいる必要は、どこにもない。


今日、あの人の機嫌を一回だけ確認しにいくのをやめてみる。


それくらいから始めていいと思う 🦥


📋 無視する人の末路についてよくある質問

Q 無視する人の末路は、本当に孤立ですか?
🦥
A. 孤立することもありますが、それだけではありませんでした。 筆者を仲間外れにしていた従兄弟は、その後も友人がいてグループにも所属していました。代わりに起きていたのは、自分が同じことをしていた記憶が抜け落ちて、他人が同じことをした時だけ本気で怒るという状態です。そしてその場にいた全員が、黙って見ていました。
Q わざと無視してくる人の心理は何ですか?
🦥
A. 感情で止まっている人、周りに見せるためにやっている人、無視している自覚がない人の3つに分かれます。 中でも厄介なのが2つ目で、二人きりの時は普通に話すのに、人が集まると無視が始まるタイプです。相手が嫌いなのではなく、その場にいる他の人に自分の立場を見せるためにやっているので、観客がいる限り終わりません。
Q 職場での無視はパワハラになりますか?
🦥
A. 6つの型のうち「人間関係からの切り離し」に無視が含まれますが、3つの要素をすべて満たす必要があります。 厚生労働省は、①優越的な関係を背景とした言動であること、②業務上必要かつ相当な範囲を超えていること、③就業環境が害されること、この3つをすべて満たすものをパワハラとしています。相手が上司でなくても、集団による行為で抵抗や拒絶が難しい場合は当てはまることがあります。筆者は弁護士ではないので、個別の判断は相談窓口で確認してください。
Q 無視されたら、無視し返していいですか?
🦥
A. 筆者は工場で半年やりましたが、あまりおすすめはしません。 相手は仕事がやりづらくなって折れてきましたが、半年かかったうえに1ヶ月で元に戻りました。やるなら「無視し返す」より「合わせに行かない」方がいいと思います。挨拶と業務連絡は普通にして、機嫌を伺いに行くのをやめるだけです。やり返そうと思って無視すると、頭の中に相手が居座ってしまいます。
Q 職場で自分だけ無視されるのはなぜですか?
🦥
A. 理由が自分の中にないことがあります。 周りに見せるための無視だった場合、選ばれる条件は、反撃してこなさそうとか、その場で立場が弱いといった程度のことです。筆者が6歳で選ばれたのも、一番年下で一番文句を言わなかったからだと思います。能力でも性格でもなく、配役に近いものです。
Q 無視されて落ち込むのは、弱いからですか?
🦥
A. 違います。実験でもはっきり確かめられています。 画面の中でボールをパスし合うだけのゲームで仲間外れにされただけでも、所属している感覚・コントロールできる感覚・自尊心・自分がここにいる意味の4つが下がりました。しかも相手がコンピュータだと伝えられていても同じように下がっています。機械相手で一度きりでも効くものが、実在の人間から毎日続くのです。


🦥 末路図鑑シリーズ

「あの人はこの先どうなるのか」を、心理学と実体験から書いています。気になるものからどうぞ。

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