「怒りっぽい人」という言葉がある。
でも本当にそうだろうか。
暴言を吐くあの人は、社長にも、取引先にも、同じ口調で怒鳴っているだろうか。
たぶん、怒鳴っていない。
つまり、こういうことだ。
暴言は「抑えられない」のではない。抑えなくていい相手が、選ばれているだけだ。
この記事では、僕が建設業で実際に見た「暴言を吐く人の末路」を書く。
現場を出禁になり、上から詰められ、最後は体を壊して入院した。
それでも、1週間で元に戻った。
暴言とは?「業務の指摘」と「人格の否定」の境界線
暴言とは、業務上の指摘を超えて、相手の人格や能力そのものを否定する言葉のこと。
厚生労働省が示すパワハラ6類型のうち「精神的な攻撃」にあたる。脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言が該当し、大勢の前での長時間の叱責も含まれる。
出典:厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」/労働施策総合推進法(パワハラ防止法)
境界線は、「行為」を言っているか「人」を言っているかだ。
| これは指摘 | これは暴言 |
|---|---|
| ▼ 業務について言っている 「この手順が間違っている」 「期限を過ぎている」 「ここを直してほしい」 → 直す対象が示されている。言われた側は次に何をすればいいか分かる。 |
▼ 人格・能力について言っている 「なんでそんな頭悪いんだ」 「言われたこともできんのか」 「使えないやつだな」 → 直しようがない。言われた側に残るのは、自分への評価だけ。 |
「頭が悪い」と言われて、明日から頭を良くすることはできない。
◾️暴言はパワハラの中で最も多い
感覚の話ではなく、数字がある。
📊 受けたパワハラの内容
半数が「暴言」を受けている
厚生労働省の実態調査では、パワハラを受けた人のうち49.4%が「精神的な攻撃(脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言)」を挙げている。次点の「過大な要求」33.3%を大きく引き離して1位だ。
つまりあなたが受けているものは、例外的な不運ではない。職場のハラスメントの、ど真ん中にあるものである。
出典:厚生労働省「職場のハラスメントに関する実態調査」
(労働者調査・パワハラを受けた内容/複数回答)
【実録】暴言を吐く人の末路|出禁・詰められる・入院
ここからが本題だ。
僕が建設業で働いていたときの話。うちは4次請で、その人は2次請だった。立場としては、こちらより上になる。
その人は毎日、自分の部下に暴言を吐いていた。
「言われたこともできんのか!」
現場に響く声だった。
まず起きたのがこれだ。
暴言は本人が思っている以上に響く。部下だけでなく、現場にいる全員の耳に入っている。
そして現場監督から、出入り禁止を言い渡された。
誰かが告発したわけでもない。ただ「この人は現場に入れられない」と判断されただけだ。
暴言を吐く人の末路で最も早く来るのは、居場所そのものを外から閉じられることだと思う。
次に、上司と取引先から詰められたと聞いた。
当然だ。出禁になれば仕事が回らない。会社に損害が出る。
ここで本人が変わったかというと、変わらなかった。言っていたのはこれだ。
反省していない。
心理学でいう自己奉仕バイアスそのものだ。うまくいかない原因を、自分ではなく他人に置く。
だから同じことを繰り返す。改善につながらない。
そして3つ目が、一番きつい末路だ。
毎日怒鳴っていれば、当然本人にもストレスが溜まる。
その人は暴飲暴食をするようになり、体を壊して入院した。
暴言は、吐いている本人の体も削っていた。
入院中は後輩が仕事を肩代わりした。復帰したとき、その人は申し訳なさそうにしていた。
このときは、正直「変わるかもしれない」と思った。
◾️それでも、1週間で元に戻った
結論から言うと、変わらなかった。
1週間もしないうちに、また暴言を吐いていた。
ここが、この記事で一番書いておきたいところだ。
暴言を吐く人の末路を調べている人が本当に知りたいのは、たぶん「あの人はいつか変わるのか?」だと思う。
僕が見た答えはこうだ。
出禁になっても、詰められても、入院しても戻った。
だから「反省させれば変わる」という前提は、いったん外したほうがいいと思っている。
暴言は「抑えられない」のではない|怒鳴っていい人リスト
ここからが、この記事の核心だ。
暴言を扱った記事はたくさんあるが、そのほとんどがこう書いている。
僕は、これは違うと思っている。
◾️職人に怒鳴り返された翌日から、その人は変わった
現場には、うちの会社とは関係のない職人さんたちもいる。
その2次請の人の暴言は、たまたま彼らの耳にも入り続けていた。
あるとき、限界に達した職人さんがこう言った。
それだけだ。
そしてその後、別の現場で会ったときには、その職人さんにペコペコしていた。
抑えられていた。ちゃんと。
◾️頭の中にある「怒鳴っていい人リスト」
整理するとこうなる。
🗒️ その人の「怒鳴っていい人リスト」
同じ人が、相手によってきれいに態度を変えている。
感情を抑えられないなら、こんな器用なことはできない。
暴言を吐く人の頭の中には、無意識の「怒鳴っていい人リスト」がある。抑える必要がある相手には、ちゃんと抑えられる。
つまり暴言は、能力の問題ではなく選択である。「あの人は感情的な人だ」ではなく、「自分が選ばれている」というのが実態に近い。
これが分かると、意味がひっくり返る。
あなたが我慢しているのは、相手が我慢できないからではない。
相手が、あなたには我慢しなくていいと判断しているからだ。
◾️一度受け入れると、ハードルが下がる
ではどうやってリストに載るのか。
僕が見た限り、条件はひとつだった。
黙って受け止めた瞬間、相手の中で「こいつには言ってもいい」というハードルが下がる。
そして2回目からは、もう迷わない。
◾️そもそも「部下」という立場でリスト入りしている可能性
もうひとつ、気づいたことがある。
その人は入院から戻ったあと、次に入ってきた部下にも同じように暴言を吐いていた。
相手が変わっても、態度は変わらなかった。
ということは、リストに載る条件は個人ではなく役割なのかもしれない。
だとすると、あなたが選ばれたのは、あなたに何か問題があったからではない。
その席に座っていたからだ。
暴言を止めた一言|静かに「どういうこと?」と返す
対処法の話をする。
実は僕も一度、その人に何か言われたことがある。
そのとき僕がやったのは、これだけだ。
それ以降、僕には何も言ってこなくなった。
◾️なぜこの一言が効くのか
暴言は、相手が動揺することで成立する。
怯えても、言い返しても、どちらでも「効いた」という手応えになる。
静かに意味を問い返すと、その手応えだけが返ってこない。
しかも、こちらは何も悪いことをしていない。
反撃していないので、次の口実を与えない。感情も使わないので、消耗しない。
大きくすると「言い返した」になり、相手に手応えを与える。
できるだけ平坦に、業務連絡の温度で。
怯えた顔も、怒った顔も、どちらも燃料になる。
無表情がいちばん強い。
沈黙を自分から埋めない。
「頭が悪い」の説明を求められて、まともに答えられる人はいない。説明できないことを、本人に気づかせるのがこの一言の役割だ。
◾️ただし、効かない場合がある(重要)
ここは正直に書いておきたい。
同じ現場で、その人の部下も我慢の限界で言い返していた。
でも、上司の態度は変わらなかった。
僕には効いて、部下には効かなかった。違いはこれだと思う。
| 僕の場合(効いた) | 部下の場合(効かなかった) |
|---|---|
| ▼ リストに載る前別会社(4次請)の人間で、日常的に怒鳴られる関係ではなかった。 まだ「怒鳴っていい人」に認定されていなかった。 だから最初の一回で止まった。 |
▼ すでにリストに載っていた毎日怒鳴られ続けたあとで、限界が来てから言い返した。 すでに認定が済んでいた。 一度載ると、よほどのことがない限り外れない。 |
まだ言われていない、あるいは1〜2回目なら、この返しで止まる可能性が高い。
すでに何ヶ月も続いているなら、言い返しても関係は変わらない前提で動いたほうがいい。
職人さんに効いたのは、立場が対等以上で、しかもその場で返したからだと思う。
時間が経つほど、この一言の効果は落ちていく。
⚠️ やってはいけない3つ
①笑ってごまかす。その場は収まるが、受け入れたことになる。リストに載る一番よくある入り口。
②感情的に言い返す。手応えを与えるだけでなく、こちらが加害者に仕立てられるリスクがある。
③周りに愚痴だけ言って終わる。気は晴れるが、状況は1ミリも動かない。記録に残す形にしたほうがいい。
◾️すでに何ヶ月も続いている人へ
もう認定が済んでいる場合、やることは変わる。
日時・場所・言われた内容・その場にいた人を、その日のうちにスマホのメモに残す。
やり取りをチャットやメールに寄せる。口頭だと「言った・言わない」にされる。
そして、次の章の話になる。
ただし──暴言を吐く人に、必ず報いが来るとは限らない
ここまで「末路」を書いてきて、都合の悪いことも書いておきたい。
物流倉庫で働いていたときの話だ。
仕事が合わなかったのか、係長にもリーダーにも毎日怒られている人がいた。
その人は、職場を去った。
では怒鳴っていた側はどうなったか。
リーダーは別部署に移り、係長に昇進していた。
少なくとも僕が見ていた範囲では、何も起きなかった。
◾️「まだ来ていないだけ」かもしれない、が
もちろん、先のことは分からない。
今日の記事の1人目のように、あとから体を壊すこともある。人生は長い。
ただ、それを待っているあいだ、削られるのはあなたの時間だ。
暴言を吐く人が必ず自滅するとは限らない。だから「いつか報いが来る」と待つのは、賭けにしかならない。
相手の末路を待つのではなく、あなたが先に離れていい。それは逃げではなく、賭けを降りるという判断だ。
暴言は、我慢して耐える範囲の話ではない。
眠れない、朝がつらい、仕事に行けない。そこまで来ているなら、我慢の限界はとっくに過ぎている。
もしあなたが「言ってしまう側」かもしれないなら
ここまで読んで、少し胸が痛くなった人もいるかもしれない。
だから最後に、こちら側にも書いておく。
相手によって口調が変わっていないか。
取引先には穏やかで、部下にだけ強く出ているなら、それは感情の問題ではない。今日書いてきたとおり、選択だ。
「言われたこともできんのか」は指摘ではない。直しようがないので、相手には何も残らない。
そして今日の1人目のように、怒鳴り続けると自分の体も壊れる。
一度謝っても1週間で戻るなら、それは反省ではなく、その場をしのいだだけだ。
僕も昔、教育係を任されたとき、自分の基準を押しつけて何人も辞めさせた。だから他人事として書いていない。
📞 相談できる窓口
- 社内のハラスメント相談窓口(設置は事業主の義務)
- 総合労働相談コーナー(全国379か所・各労働局や労基署内/無料)
- みんなの人権110番(法務省/0570-003-110)
- こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)
- 社内になければ、地域のユニオン(労働組合)も使える
暴言を吐く人の末路について|よくある質問
暴言を吐く人の末路はどうなりますか?
どこからが暴言で、どこまでが指摘ですか?
なぜ暴言を吐く人は、相手によって態度を変えるのですか?
暴言を吐かれたとき、どう返せばいいですか?
言い返せば暴言は止まりますか?
暴言を吐く人は反省すれば変わりますか?
暴言を吐く人に、必ず報いは来ますか?
暴言はパワハラになりますか?
あとがき:あなたが選ばれたのは、弱いからではない
暴言を吐かれ続けていると、だんだんこう思えてくる。
自分がなめられているんじゃないか。自分が弱いからじゃないか。
そんなことはない。
今日書いてきたとおり、その人は怒鳴っていい相手と、そうでない相手を、きっちり分けていた。
あなたが選ばれたのは、あなたに問題があったからではなく、その席に座っていたからだ。
そして相手は、たぶん変わらない。
出禁になっても、入院しても、1週間で戻る人を僕は見た。
だから、変えようとしなくていい。分からせようとしなくてもいい。
まだ言われ始めたばかりなら、次の一回を、静かに問い返してみてほしい。
もう長く続いているなら、記録を残して、離れる準備をしてほしい。
報いを待つ必要はない。あなたの時間のほうが、ずっと価値がある。
今日も、怒鳴り声の届かないところで、のんびり過ごせますように🦥
🦥 末路図鑑シリーズ
「あの人はこの先どうなるのか」を、心理学と実体験から書いています。気になるものからどうぞ。
ナマケ者
ゆる哲学の布教者/個人事業主
5歳で父を過労死で亡くし、HSP気質のまま働き続けた結果、ストレスが限界を超えて諭旨解雇。半年の引きこもりを経て今に至ります。毎日通っていたパチンコは7年近く行っていません。統計や法律は一次資料で確認して書いています。
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