「あの人、なんであんなにフォークリフトが速いんだろう」
同じ工場で働いていて、そう思ったことはないだろうか。
操作が上手いからだと思って、レバーの動かし方や曲がるタイミングを真似してみた人もいると思う。
僕もそうだった。曲がるタイミングも、爪を差し込む速さも、上手い人を見て真似していた。
だけど、たぶんそこじゃない。
僕は自動車部品を供給する工場でカウンターバランス式フォークリフトに乗っていて、2年目に「あいつが一番フォークリフトが上手い」と言われるようになった。
操作が特別だったわけじゃないと思う。
この記事はフォークリフトの操作のコツの記事じゃない。爪の水平の取り方も、パレットの差し込み方も書かない。
フォークリフトが上手いと言われる人が、現場の何を見て動いているのかという話をする。
僕がいた工場は、同じ勤務時間に8台のフォークリフトが動いていた。
正直に言うと、8台とも上手かった。
それなのに、なぜ差がついたんだろう。
もくじ(タップで開閉)
- 第1章:フォークリフトが上手い人の特徴は、操作の丁寧さじゃなかった
- ◾️フォークリフトが上手い人は、事故を起こさない人じゃない
- ◾️どのフォークリフトもケツは傷だらけだった
- ◾️それでもフォークリフトの上手い下手は分かれていた
- 第2章:フォークリフトが上手い人は、材料が減る速さを計算している
- ◾️フォークリフトで運ぶパレットの内容量から逆算する
- ◾️作業者ごとのフォークリフトを呼ぶ速さを覚える
- ◾️ラインの前を通るたびに、残りの材料を見て計算を直す
- 第3章:フォークリフトが上手い人は、人のクセを覚えて先に動く
- ◾️フォークリフト8台の動きは見えない。それでも予測はできる
- ◾️フォークリフトに乗る人は、それぞれ作業の順番が決まっている
- ◾️フォークリフトが被りそうな材料置き場には、先に近づかない
- ◾️フォークリフトが上手い人は、いつも第2優先を持っている
- 第4章:フォークリフトが上手い人は、往復5分を無駄にしない
- ◾️材料置き場までは往復で5分以上かかる
- ◾️フォークリフトを空で走らせない。ついでに次を持って帰る
- ◾️フォークリフトの操作は上手いのに、現場を止めてしまう人もいた
- ◾️フォークリフトの操作も上手くなるけど、たぶんそこじゃない
- 第5章:フォークリフトが上手いかどうかを決めているのは、まわりの人だ
- ◾️「一番上手い」と言われた理由を並べてみた
- ◾️並べてみたら、フォークリフトの操作の話がほとんど入っていなかった
- ◾️「工場全体を上から見てるように動く」と言われた
- あとがき:フォークリフトが上手くなりたいなら、まず操作のミスを減らしてから
- 📋 フォークリフトが上手い人からよくある質問
第1章:フォークリフトが上手い人の特徴は、操作の丁寧さじゃなかった
まず、よく言われているフォークリフトが上手い人の特徴を並べてみる。
操作が丁寧。爪の水平が取れている。同時操作をしない。基本に忠実で安全確認を怠らない。事故を起こさない。
全部その通りだと思う。否定する気はまったくない。
ただ、僕がいた工場では8台のフォークリフトに乗っていた全員が、そこはできていた。
◾️フォークリフトが上手い人は、事故を起こさない人じゃない
材料や完成品をこかしてダメにするような事故は、ほとんど起きなかった。
工場全体で、年に一度あるかどうか。
8台が朝から晩まで動いていて、その頻度である。
全員が事故を起こさないなら、
事故の少なさでは差がつかない。
「事故を起こさないのがフォークリフトの上手い人だ」という説明は正しい。
だけど、その説明は上手い人が集まっている現場では、物差しとして使えない。
◾️どのフォークリフトもケツは傷だらけだった
ここは正直に書いておく。
荷をこかす事故はほとんど起きなかったけど、どのフォークリフトも、ケツの塗装は傷だらけだった。
ぶつけていたということだ。事故といえば事故だと思う。
ただ、車体をぶつけてしまうのには理由がある。
材料置き場の幅が、フォークリフトの全長より狭い
工場内の道はデコボコしていて、傾斜もある
そこで「後ろを確認する」「下がる」「旋回する」「材料を下ろす」を同時にやる
後ろばかり見ていると、今度は材料のほうを倒してしまう。
後ろを見ながら、下がりながら、旋回しながら、材料を下ろす。
全部を同時にやらないと、材料置き場に入らないし、材料も置けない。
わざと擦っていたわけじゃないし、毎回ぶつけていたわけでもない。
だけど腕の問題というより、通路の幅の問題だったと思う。
狭い環境で、みんなよくやっていたと思う。(今でもそう思う)
◾️それでもフォークリフトの上手い下手は分かれていた
ここまでをまとめると、こうなる。
8台のフォークリフトの全員が、操作は上手かった。荷をこかす事故もほぼ起こさない。車体の擦り傷は全員にあった。
つまり操作の精度では、誰も差がついていなかった。
それなのに「誰が一番フォークリフトが上手いか」という話になると、名前が挙がる人は決まっていた。
差がついていたのは、操作じゃない部分だったということになる。
第2章:フォークリフトが上手い人は、材料が減る速さを計算している
フォークリフトで材料を運ぶ仕事は、運ぶこと自体が目的じゃない。
ライン内の作業者の手を止めないことが目的だ。
材料が切れた瞬間にライン内の作業者は手が止まるので、フォークリフトに乗っている人間がやることは、材料が切れる前に届けることに尽きる。
◾️フォークリフトで運ぶパレットの内容量から逆算する
じゃあ、どうやって切れるタイミングを知るのか。
ここは感覚じゃなくて、計算で出せる。
パレット1枚に入っている材料の数は決まっている
完成品1個を作るのに使う材料の数も決まっている
割れば、そのパレットで何個作れるかが出る
あとは、そのラインが1時間に何個作るのかを掛ければいい。
パレットの内容量は、現場ごとに決まっている数字だ。
完成品に何個使うかも決まっている。
だからこの2つを覚えてしまえば、あと何分でその材料が切れるかは計算できる。
僕は現場に入って1ヶ月くらいで、頭の中でこの計算をするようになっていた。(暗算が得意なわけじゃない。毎日同じ数字を使うので、そのうち覚えてしまう)
◾️作業者ごとのフォークリフトを呼ぶ速さを覚える
ただし、計算どおりにはいかない。
同じラインでも、作業している人によって材料が減る速さが違うからだ。
速い人の持ち場は、計算より早く材料が切れる。(本当に速い人は、こっちが焦るくらい速い)
ゆっくりな人の持ち場は、計算より遅い。
だから作業者ごとのスピードを覚えておかないと、計算の精度が上がらない。
「今日はあの人が入っているから、いつもより早く呼ばれるな」
そういう予測ができるようになると、材料を持っていくタイミングが変わってくる。
◾️ラインの前を通るたびに、残りの材料を見て計算を直す
計算と人のスピードだけだと、まだズレる。
だから最後に、実際の材料を見て直す。
フォークリフトで工場内を移動していると、いろんなラインの前を通ることになる。
通るたびに、そのラインの材料がどのくらい減っているかを確認する。
通り過ぎる数秒で見るだけでいい。
頭の中の計算より減っていれば早める。減っていなければ後回しにする。
この確認を移動のたびに繰り返していると、工場のどこで何がどのくらい残っているかが、なんとなく分かるようになってくる。
ちなみにフォークリフトの仕事が全部この計算をするわけじゃない。
倉庫で入出庫だけをしている現場なら、また別の読み方になると思う。
ただ「次に何が必要になるかを先に読む」という部分は、たぶんどの仕事でも同じだ。
第3章:フォークリフトが上手い人は、人のクセを覚えて先に動く
計算で読むのは材料の減り方だけだ。
もうひとつ読まないといけないものがある。
同じ工場で動いている、他のフォークリフトだ。
◾️フォークリフト8台の動きは見えない。それでも予測はできる
僕がいた工場では、同じ勤務時間に8台のフォークリフトが動いていた。
それぞれに担当のエリアがあって工場中に散らばっているので、8台全員が今どこで何をしているかなんて、見えるわけがない。
それでも、だいたい予測はできる。
人ごとに、作業の順番が決まっているからだ。
◾️フォークリフトに乗る人は、それぞれ作業の順番が決まっている
たとえば完成品を運んだあとに、必ず空の容器を準備しに行く人がいる。
材料を1つ運んだら、必ずいったん定位置に戻る人もいる。
本人は意識していないと思うけど、フォークリフトに乗っている人には、それぞれクセがある。
「あの人がさっき完成品を運んでいたから、
次は容器を取りに行くだろうな」
クセを覚えてしまえば、姿が見えなくても、今どのあたりにいるかが読める。
別の人の担当エリアを通るときに、どの材料が準備してあって、どの材料がまだなのかを見ておくと、さらに精度が上がる。
◾️フォークリフトが被りそうな材料置き場には、先に近づかない
読めるようになると、動き方が変わる。
大きい材料は、ライン内に置いておくスペースがない。
だから大きい材料は、切れる直前に取りに行くことになる。
つまり大きい材料の置き場は、フォークリフトが被りやすい場所だということだ。
僕は通りがかりに大きい材料の残量をチラッと見て、「そろそろ無くなりそうだな」と思ったら、その置き場には近づかないようにしていた。
近づかずに別の部品置き場の材料を先に取りに行っておくと、担当の人が来たときに置き場が空いているので、お互いが待たなくて済む。
◾️フォークリフトが上手い人は、いつも第2優先を持っている
それでも、たまたま被ることはある。
読み違えることもあるし、相手がいつもと違う動きをすることもあるからだ。
だから僕は、取りに行く材料をいつも2つ考えていた。
第1優先:今いちばん切れそうな材料
第2優先:その近くにある、別の材料
第1優先の置き場が埋まっていたら、待たずに第2優先へ回る。
フォークリフトが被ったときに、そこで待ってしまうと時間が止まる。
第2優先を持っておけば、止まらずに次の作業に移れる。
そして戻ってきた頃には、第1優先の置き場が空いている。(たまに空いてないけど、そのときはまた別の材料に行けばいい)
第2優先を用意しておくのは、譲るためじゃない。自分が止まらないためだ。
第4章:フォークリフトが上手い人は、往復5分を無駄にしない
ここまで材料の読み方と、他のフォークリフトの読み方を書いた。
最後に、いちばん効いていたと思うものを書く。
◾️材料置き場までは往復で5分以上かかる
フォークリフトで材料置き場に行って、材料を積んで、ラインまで戻ってくる。
僕がいた工場では、早くても往復で5分以上かかった。
通路は狭いし、交差点では止まるし、置き場では旋回するので、急いだところで削れるのはせいぜい数十秒だと思う。
つまり1往復あたり5分というコストは、操作を速くしても減らせない。
減らせるのは、往復の回数だけだ。
◾️フォークリフトを空で走らせない。ついでに次を持って帰る
だから僕は、空で戻らないようにしていた。
完成品を運んだあとなら、その帰りに空の容器を持って帰る。
材料を届けた帰りなら、次に切れそうな材料の空パレットを持って帰る。
第2章の計算と、第3章のクセの読みは、ここで使うためにあったと言ってもいい。
次に何が必要になるかを先に読めていないと、
「ついでに持って帰る」ができない。
読めていない人は、材料が切れてから呼ばれて、そこから5分かけて取りに行くことになる。
読めている人は、切れる前にもう届いている。
1回の差は5分でも、1日に何十往復もするので、終わってみると大きな差になっている。
◾️フォークリフトの操作は上手いのに、現場を止めてしまう人もいた
先に言っておくと、フォークリフトの技術としては、みんな上手かった。
そこは本当にそう思う。
ただ、操作が上手いのに、結果としてラインを止めてしまう人はいた。
① 材料の残量を確認せず、目先の10分かかる作業を先にやってしまう
② 他のフォークリフトに気を遣いすぎて、材料置き場でずっと待っている
③ 焦って、普段ささっと終わる作業に時間がかかってしまう
③になると、別の材料まで切れて、ライン内が酷いことになる。
①は目の前の作業に集中しているだけで本人に悪気はないけど、その10分のあいだに別の場所の材料が切れてしまう。
②も同じで、譲ろうとして待っている。気を遣っているだけだ。
ただ、待っているあいだ、自分の担当エリアは誰も見ていないことになる。
③がいちばんしんどい。焦ると操作が崩れて、いつもより時間がかかる。
そのあいだに別の材料も切れて、完成品も溜まって、収拾がつかなくなる。(フォークリフトはメンタルで動きが変わる。ここは本当にそう思う)
たぶん、こう考えられるかどうかの差だったと思う。
「この材料がもうすぐ無くなって、そのパレットと重ねられるから、
先に材料を変えてあげてから運ぼう」
1つの動きで2つ片付ける。それだけの話だ。
◾️フォークリフトの操作も上手くなるけど、たぶんそこじゃない
もちろん、乗っているうちに操作も上手くなった。
前に書いたときは「まずバックレストにパレットを当てて真っ直ぐにしてから重ねる」と説明した。
だけど最後のほうは、斜めのまま持ち上げて、そのまま重ねられるようになっていた。
当てて直す手間がなくなるので、1枚あたり数秒は速い。
ただ正直なところ、これで「一番上手い」と言われたわけじゃないと思う。
第5章:フォークリフトが上手いかどうかを決めているのは、まわりの人だ
ここで一度、整理してみたい。
僕が「一番フォークリフトが上手い」と言われた理由は、たぶん1つじゃない。
◾️「一番上手い」と言われた理由を並べてみた
思い当たるものを、全部並べてみる。
・パレットを重ねる操作が速い
・ライン内の作業者を待たせない
・交差点や作業場所が被ったら、ほぼ譲る
・誰よりも人の作業を手伝う
・材料を過剰に持ってきて、人の邪魔をしない
・交差点での指差し確認のルールを守る
思い出せるのは、このあたり。
4つ目は、フォークリフトの話ですらない。
時間が空いたときに、人の作業を手伝っていただけだ。
5つ目も操作じゃない。
材料を多く持っていくと、ライン内が狭くなって作業者の邪魔になる。だから足りる分だけ持っていく。
そして最後の指差し確認は、ちゃんと守っていた。
前に「講習で習った手順は守っていない」と書いたけど、交差点の指差し確認だけは別だ。
フォークリフト同士がぶつかったり、人を巻き込んだりするのは交差点だからだ。(ここを省く人にはなりたくなかった)
◾️並べてみたら、フォークリフトの操作の話がほとんど入っていなかった
6つ並べてみて、自分でも少し驚いた。
操作の話は、1つ目しか入っていない。
あとは全部、まわりの人との関わり方の話だった。
待たせない。譲る。手伝う。邪魔をしない。ルールを守る。
フォークリフトが上手いというのは、どうやら機械を上手に動かすことじゃなかったらしい。
◾️「工場全体を上から見てるように動く」と言われた
当時、こう言われたことがある。
「お前は工場全体を上から見てるように動くよな」
嬉しかったけど、実際に上から見えていたわけじゃない。
やっていたのは、ここまで書いてきた3つだけだ。
① パレットの内容量と使用量から、材料が切れる時間を計算する
② フォークリフトに乗っている人のクセを覚えて、動きを予測する
③ 往復5分を無駄にしないように、ついでに次を持って帰る
見えていたんじゃない。計算して、覚えて、先に動いていただけだ。
そして、ここが大事なところだと思う。
「上から見てるように動く」と言ったのは、僕じゃない。
まわりの人だ。
フォークリフトが上手いかどうかは、自分では決められない。
決めているのは、待たされなかった人たちのほうだ。
あとがき:フォークリフトが上手くなりたいなら、まず操作のミスを減らしてから
最後に、順番の話をしておきたい。
ここまで「まわりを読め」という話をしてきたけど、操作が不安なうちにやろうとすると、たぶん両方できなくなる。
爪が入らない、パレットが重ならない、という段階で工場全体を見ようとしても、頭が足りなくなるだけなので、まずは操作のミスを減らしてほしい。
考えなくても体が動くようになってから、まわりを見はじめるのがいいと思う。
それと、フォークリフトの仕事が全部この記事の通りだとは思っていない。
倉庫の入出庫だけをしている現場なら、読むものも変わってくるはずだ。
ただ「次に何が必要になるかを先に読んで、ついでに片付けておく」という部分は、フォークリフトじゃなくても使えると思う。
正直に言うと、僕にできていたことが誰にでもできると言ったら嘘になる。
そこまで言い切れるほど、僕はできた人間じゃない。
ただ、意識しながら作業を繰り返していけば、たぶんどんどん速くなっていく。
気づいたときには、誰かに「上手いよな」と言われているかもしれない。
こんな記事もどうでしょう⬇️
風呂キャンセル界隈だった僕が入る時間を決めた結果|気力の問題じゃなかったナマケ者のスロー日記
【実録】足場鳶になる前に知ってほしい|日当8,000円で「使い放題」と言われて辞めた話ナマケ者のスロー日記
新しい職場で頑張りすぎる人の末路。「限界サイン」の見分け方と心を壊さない生存戦略ナマケ者のスロー日記
【うつ・ADHD】仕事辞めたい人はdodaチャレンジで「働きやすい職場」へナマケ者のスロー日記
転職活動に疲れたら:転職エージェントで楽して環境を変える人生再スタート術ナマケ者のスロー日記
📋 フォークリフトが上手い人からよくある質問
フォークリフトが上手い人の特徴は何ですか?
フォークリフトの操作が上手ければ、現場でも評価されますか?
材料が減る速さは、どうやって分かるのですか?
周りの動きまで見る余裕がありません。
他のフォークリフトと作業場所が被ったとき、どうすればいいですか?
フォークリフトで車体をぶつけてしまいます。下手だからでしょうか?
どれくらいで「上手い」と言われるようになりますか?
ナマケ者
ゆる哲学の布教者/個人事業主
5歳で父を過労死で亡くし、HSP気質のまま働き続けた結果、ストレスが限界を超えて諭旨解雇。半年の引きこもりを経て今に至ります。毎日通っていたパチンコは7年近く行っていません。統計や法律は一次資料で確認して書いています。
💬 コメント・感想
記事の感想や質問など、お気軽にどうぞ 🦥
いただいたコメントは、確認のうえ順次このページに表示させてもらいます。
※URLやリンクは投稿できません(自動的に非表示になります)。
※宣伝・誹謗中傷・スパムと判断したコメントは表示されません。
※返信が必要な場合はお問い合わせからどうぞ。