職場に、こういう人はいないだろうか。
・「あの人が悪口言ってたよ」と、聞いてもいないことを教えてくる
・昨日まで無視していた人と、今日はなぜか仲良く話している
・その人が入ると、なぜか人間関係がこじれる
そして厄介なのは、それを指摘できないことだ。
「教えてくれただけかもしれない」「僕が気にしすぎなのかも」と思ってしまう。
気のせいじゃない。
この行動には、心理学でちゃんと名前がついている。
そして、やっている本人が最後に一番損をする。
人間関係を引っ掻き回す人とは?「関係性攻撃」という名前がある
関係性攻撃とは、暴力ではなく無視・噂・仲間外れによって相手の人間関係そのものを壊す攻撃のこと。
心理学者のニッキ・クリックとジェニファー・グロトピーターが1995年に定義した概念。具体例として「無視する」「仲間外れにする」「噂を流す」が挙げられている。
出典:Crick, N. R., & Grotpeter, J. K. (1995). Relational aggression, gender, and social-psychological adjustment. Child Development, 66(3), 710-722.
殴らない。怒鳴らない。
だから、やられている側も「これは被害だ」と言い出せない。
◾️殴らないから、被害だと気づきにくい
殴られたら、誰が見ても加害だと分かる。
だけど関係を壊されても、証拠が残らない。
「あの人が悪口言ってたよ」と伝えられただけ。事実かどうかも確認できない。
それでも、その一言のあとから空気が変わる。
本人は何もしていないように見えて、職場の人間関係だけが確実に壊れていく。
これが関係性攻撃の厄介なところだ。
ちなみにクリックたちの研究はもともと子どもを対象にしたものだった。だけど後で紹介するとおり、大人でも同じことが起きていることが日本の研究で確認されている。
◾️【実録】僕が職場で見た「引っ掻き回す人」
僕の元同僚に、こういう人がいた。
誰彼構わず敵を作っていく人だった。
ただ、面白いのはここからで、敵が固定されていなかった。
今日の敵と明日の敵が違う。昨日の敵が今日の味方になっている。
この人が最後どうなったかは、記事の後半に書く。
正直、僕が想像していた末路とは違った。
人間関係を引っ掻き回す人の3つの型【特徴】
引っ掻き回す人には、動き方に型がある。
ひとまとめに「性格が悪い人」で片付けると対処を間違えるので、3つに分けておきたい。
一番よく見るのがこれ。
本人は「教えてあげた」つもりでいる。
だけど言われた側は、直接確認できない。
本当かどうか分からないまま、〇〇さんと顔を合わせることになる。
そして次は逆方向にも運ぶ。「あの人、こう言ってたよ」と。
両方から情報が集まる中継地点が、こうしてできあがる。
口が上手く、聞き上手なタイプが多い。だからつい話してしまう。悪気があるように見えないから余計にたちが悪い。
僕の元同僚がこれだった。
動きを順番に書くと、こうなる。
2. 次はBさんにモヤっとする → さっき切ったAさんを引き戻して、一緒にBさんを無視する
3. これを延々と繰り返す
敵は入れ替わっていく。
だけど、いつも「自分+誰か」の構図だけは保たれている。
だから本人は孤立していると感じない。むしろ、うまく立ち回れていると思っている。
この型が一番見抜きにくい。誰かと仲良くしている姿しか見えないから、外からは普通の人に見える。
これは少し性質が違う。
面識のない友達同士を、自分の都合で引き合わせてしまう人。
「一緒に遊べば効率がいいじゃん」くらいの感覚で、勝手に場をセッティングする。
引き合わされた側は気まずい。だけど本人は気づいていない。
ここには悪意がない。
あるのは、自分の都合だけで世界を組み立ててしまう癖だ。
そしてこの型があることが、次の章につながる。全員が悪意でやっているわけじゃない、という話だ。
🧭 引っ掻き回す人チェックリスト
- 聞いてもいない他人の発言を運んでくる(「〇〇さんが言ってたよ」)
- 無視する相手が、時期によって入れ替わる
- 以前切っていた人と、いつの間にか組んでいる
- プライベートを根掘り葉掘り聞いてくる(ネタを集めている)
- その人がいない場所では、職場の空気が普通に戻る
- 自分が責められそうになると、話をすり替えるのが速い
- 本人だけは、常に誰かと仲良くしている
ここまで読んで「やっぱりそうか」と思ったなら、その感覚のほうが正しい。まず「自分がおかしいのかも」という自責を、ここで下ろしてほしい。
なぜ人間関係を引っ掻き回すのか?2つの認知のゆがみ【心理】
ここからが本題になる。
引っ掻き回す人は、自分が攻撃しているとは思っていない。
これは僕の印象論ではなく、日本の研究で示されている。
大人の関係性攻撃と結びついていたのは、「自己中心的バイアス」と「被害妄想的認知」の2つだった。
東京学芸大学の品田瑞穂氏が、20〜49歳の成人393名(平均35.22歳)を対象に実施した研究。「自己中心的バイアス」「他者非難」「被害妄想的認知」の3つの認知のゆがみを検討したところ、関係性攻撃と正の関連が見られたのは前者2つだった。
出典:品田瑞穂(2023)成人期における関係性攻撃──特性共感と認知のゆがみの役割に関する検討── 心理学研究, 93(6), 552-558.
◾️①自己中心的バイアス:自分の都合が世界の基準になる
自分にとって都合がいいかどうかで、物事を判断してしまう傾向のこと。
③の悪気なし型は、まさにこれだ。
友達同士を勝手に引き合わせるのも、本人の中では筋が通っている。自分が効率よく遊べるから、いいことだと本気で思っている。
相手がどう感じるかは、そもそも計算に入っていない。
◾️②被害妄想的認知:本人は「自分が被害者」だと思っている
そしてここが、この記事で一番大事なところだ。
被害妄想的認知というのは、自分が不当に攻撃されている、迫害されていると感じる認知のゆがみのこと。
つまり引っ掻き回す人の頭の中では、こうなっている。
攻撃されているから、防衛しているだけだ。
だから「あなたのやっていることは攻撃ですよ」と伝えても届かない。
本人の実感としては、被害者はいつも自分のほうだからだ。
そして後で書くとおり、これが末路から抜け出せない原因になる。
◾️「他人のせいにする人」とは、実は別物だった
この研究、地味だけど面白い結果が出ている。
検討された認知のゆがみは3つあった。自己中心的バイアス、他者非難、被害妄想的認知。
このうち「他者非難」だけは、関係性攻撃と関連しなかった。
これはつまり、引っ掻き回す人は「なんでもかんでも他人のせいにするタイプ」とは別の生き物だということだ。
声を上げて誰かを責めるわけじゃない。
自分中心に世界を見て、自分が攻撃されていると感じて、静かに人間関係を組み替えていく。
だから見抜きにくいし、周りも「悪い人ではないんだけど……」で止まってしまう。
人間関係を引っ掻き回す人の末路
ここから末路の話に入る。
ただ、その前に言っておきたいことがある。
この戦略、しばらくはちゃんと機能する。
◾️敵を入れ替えれば、味方は確保できる(相手が替えられる間だけ)
②の同盟組み替え型を、もう一度思い出してほしい。
Aを切ってBと組む。Bを切ってAと組み直す。
敵は常にいるけど、味方も常にいる。
だから本人は困らない。それどころか成功体験になっている。
人間関係でトラブルが起きても、相手を替えれば解決すると学習してしまう。
実際、しばらくはそれで回る。
マリオでコインを取り続けているような状態だ。減らないから、問題に気づけない。
◾️【実録】上司を敵にした瞬間、戦略が崩れた元同僚の話
📁 CASE FILE ── 敵を移し続けた人の結末
元同僚は、敵を入れ替えながら数年やっていた。
そしてある日、上司を敵にした。
いつもどおりのはずだった。別の人を新しい敵にして、味方を作り直せばいい。
でも、そうはならなかった。
上司の態度だけは、戻らなかったのだ。
他の誰を敵にしても、他の誰と組み直しても、上司からの評価は元に戻らない。
そして最終的に、居づらくなって自分から辞めていった。
誰かに追い出されたわけじゃない。
怒鳴られたわけでも、処分されたわけでもない。
自分から出ていった。
◾️なぜ崩れたのか:替えのきかない相手を敵にしたから
この戦略が成立する条件は、ひとつだけだ。
相手が入れ替え可能であること。
同僚なら替えがきく。Aがダメでも、Bがいる。Cもいる。
だけど上司は替えられない。
評価する側で、逃げられなくて、しかも仕事で毎日関わる。
替えのきかない相手を敵に回した瞬間、この戦略は破綻する。
そして敵の在庫が一巡したとき、部屋に残っているのは自分だけになる。
◾️中継地点だった人が、一番情報を失う
①の伝書鳩型には、別の形の末路が来る。
情報を運び続けると、周りは学習する。
そうなると、誰も本当のことを話さなくなる。
当たり障りのない話しかしない。相談もしない。
皮肉な話で、情報を集めるために引っ掻き回していた人が、最終的に一番情報の入ってこない人になる。
これは感覚器を失うのと同じだ。自分の評価がどうなっているかも、周りが何を考えているかも分からなくなる。
◾️周りは、静かに制裁している
ここで2つの研究を紹介したい。
ジョージタウン大学のクリスティーン・ポラス教授の調査によると、職場で無礼な態度を取られた人は、正面から反論するのではなく「意図的に避ける」という方法で自分を守る。
具体的には63%がその人を意図的に避け、48%が助ける労力を意図的に減らす。
誰も面と向かって怒らない。ただ、静かに手を引く。
そしてもうひとつ。
組織心理学者のアダム・グラントによれば、世の中の56%は「マッチャー」と呼ばれるタイプだ。損得のバランスを取ろうとする人たちで、最大派閥にあたる。
マッチャーは不公平を極端に嫌う。
だから自分が被害を受けていなくても、誰かが不当に扱われているのを見ると、加害者側に静かな制裁を始める。
・いい話があっても推薦しない
・最低限しか関わらない
攻撃ではない。ただ、協力をやめるだけ。
だから訴えることもできないし、本人は何が起きているのか分からない。
※出典:クリスティーン・ポラス『Think CIVILITY「礼儀正しさ」こそ最強の生存戦略である』/アダム・グラント『GIVE & TAKE「与える人」こそ成功する時代』
◾️そして本人には、理由が分からない
ここで最初の話に戻る。
研究が示していたのは、引っ掻き回す人には被害妄想的認知があるということだった。
だから、人が離れていく理由を、こう解釈する。
「自分は攻撃されている」
自分の行動が原因だとは考えない。というより、その発想が出てこない。
そして防衛しなければと思って、もっと引っ掻き回す。
抜け出せない構造になっている。
本人にとって、これは防衛なのだ。だから止まらない。
これが人間関係を引っ掻き回す人の末路だと僕は思っている。
孤立するから可哀想、という話ではない。
自分で自分の居場所を減らし続けているのに、その理由に一生気づけない。
そこが一番きついところだ。
引っ掻き回す人への対処法【今日からできる3つ】
「気にしない」で解決するなら、誰も困っていない。
なので、明日から実際にできることだけ書く。
「〇〇さんが悪口言ってたよ」と言われたときの返し方だ。
でも直接聞いてないから、僕には分からないな」
ここで同意すると、「あなたも言っていた」と運ばれる。
かといって強く否定すると、今度はあなたが敵認定される。
だから、どちらでもない返しをする。
感謝はする。でも判断はしない。情報の流れを、自分のところで止める。
「私は何も知りません」と突っぱねると、それはそれで敵だと判断される。
だから、運んでも面白くない話題に寄せていく。
ところで、あの店の新メニュー食べました?」
天気、食べ物、ペット。何でもいい。
職場の人の評価や、自分のプライベートを渡さない。それだけでネタ元として使えない人になる。
興味を失われるのが、一番平和な決着だ。
口頭だと「言った・言わない」にされる。
仕事の依頼も確認も、できるだけチャットやメールに寄せてほしい。
それだけで、伝書鳩は機能しなくなる。運ぶ余地がなくなるからだ。
もし実害が出ているなら、日時/場所/誰が/何を言ったか/その場にいた人を、その日のうちにスマホのメモに残しておく。
記憶は薄れるけど、記録は残る。
⚠️ やってはいけないこと:正面から問い詰める
「それ、告げ口ですよね」と正面から指摘するのは、一番やってはいけない。
思い出してほしい。相手には被害妄想的認知がある。
指摘は「攻撃された」として処理される。そして次の標的があなたになる。
分からせようとしないほうがいい。というより、構造的に分からせることができない。
それでも消耗するなら、逃げていい
ここまで対処法を書いておいて何だけど。
ずっと気を張って会話するのは、しんどい。
相手は変わらない。本人が原因に気づけない構造になっているから、時間が解決することもない。
あなたが我慢して、擦り減って、その職場に居続ける義理はどこにもない。
環境を変えるのは、負けじゃない。
引っ掻き回す人の自滅に、最後まで付き合ってあげる必要はないと思う。
よくある質問
人間関係を引っ掻き回す人の末路はどうなりますか?
人間関係を引っ掻き回す人の特徴は何ですか?
なぜ人間関係を引っ掻き回すのですか?
「あの人が悪口を言っていたよ」と言われたら、どう返せばいいですか?
引っ掻き回す人に注意しても大丈夫ですか?
引っ掻き回す人は、自分が悪いと気づいていますか?
引っ掻き回す人と、他人のせいにする人は同じですか?
あとがき:あなたの違和感は、正しかった
この記事を最後まで読んだということは、思い当たる人がいるんだと思う。
そして、たぶんずっと「自分が気にしすぎなのかな」と思ってきたんじゃないだろうか。
そんなことはない。
あなたが感じた違和感には、ちゃんと名前がついていた。
ただ、ひとつだけ書いておきたいことがある。
③の悪気なし型のように、全員が悪意でやっているわけじゃない。
自分の都合だけで世界を組み立ててしまう癖と、自分が攻撃されているという思い込み。その2つが噛み合ってしまっただけの人もいる。
だからといって、あなたが我慢する理由にはならないけど。
相手を変えようとしなくていい。裁かなくてもいい。
引っ掻き回す人は、放っておいても自分で自分の居場所を減らしていく。
あなたの大事な時間を、そこに使う必要はない。
今日もあなたが、余計な人間関係に消耗せずに過ごせますように🦥
ナマケ者
ゆる哲学の布教者/個人事業主
5歳で父を過労死で亡くし、HSP気質のまま働き続けた結果、ストレスが限界を超えて諭旨解雇。半年の引きこもりを経て今に至ります。毎日通っていたパチンコは7年近く行っていません。統計や法律は一次資料で確認して書いています。
💬 コメント・感想
記事の感想や質問など、お気軽にどうぞ 🦥
いただいたコメントは、確認のうえ順次このページに表示させてもらいます。
※URLやリンクは投稿できません(自動的に非表示になります)。
※宣伝・誹謗中傷・スパムと判断したコメントは表示されません。
※返信が必要な場合はお問い合わせからどうぞ。