フォークリフトが下手すぎる僕が2年で20年選手より上手くなった結果

「なんで自分だけ、こんなに下手なんだろう」

フォークリフトに乗り始めて、そう思ったことがあるなら。


後ろで誰かが待っている気配がする。パレットが真っ直ぐ重ならない。爪が入らない。焦る。もっと入らない。


分かる。僕もそうだった。


僕は一度、カーブで速度を落とさずに、パレットに積んであったボルトを全部ぶちまけたことがある。


全部である。


(あの音を思い出すと、今でも胃のあたりが冷たくなる)

それでも、その現場でカウンターに乗り始めて2年。気づいたら「あいつが一番フォークリフト上手いよな」と言われるようになっていた。

ちなみにそれまでに、サイドフォークとリーチで3年ほど乗っている。つまり3年乗っても下手だった人間の話だ。

この記事は「フォークリフトの正しい操作方法」の記事じゃない。教科書どおりにやると現場では通用しない、という話をする。


下手なのは、本当に自分のせいだろうか。

もくじ(タップで開閉)

第1章:フォークリフトが下手すぎた頃の、僕の事故一覧

まず、僕がやらかしたことを並べておく。


読んでいて「自分のほうがマシだな」と思ってもらえたら、それが一番いい。

◾️ボルトを全部ぶちまけた

リーチフォークリフトに乗っていた頃の話。


ピッキングが終わったパレットの山を、バック走行で運んでいた。


カーブ。速度を落とさなかった。


結果、中のボルトが全部出た。


(拾った。ひたすら拾った)

◾️部品に突っ込んだ日、熱が38.5度あった

別の日。ぼーっとしていて、地面に置いてある部品にそのまま突っ込んだ。


また材料をぶちまけた。


さすがに自分でもおかしいと思って、帰ってから熱を計ったら38.5度あった。


(先に計れ)

◾️ポリ容器をぶちまけて、後ろのフォークリフトを止めた

次の工場でカウンターに乗り始めた。


空になったポリ容器をパレットに溜めて運ぶ仕事があった。


またカーブで速度を出しすぎた。


学習していない。


ポリがバラバラと転がって、後ろからついてきていたフォークリフトを完全に止めた。


(あの人、たぶん心の中で何か言っていたと思う)

◾️空ポリが上から降ってきた

空ポリ置き場が、少し傾斜のある場所だった。


空ポリを溜めたパレットの上に、もう1枚重ねようとして爪を上げた。


爪の先が、ほんの少しだけ上を向いていたらしい。


そのまま空ポリが降ってきた。


(上から降ってくるタイプの失敗は、本当に心臓に悪い)

◾️3段までのところを6段持って崩した

次の現場では、自動車部品を作業員に供給する仕事をしていた。


その材料は、現場のルールで3段までしか持ってはいけなかった。


僕はそのルールをよく分かっていなかった。


6段持った。


5段目と6段目の鉄パレットが崩れて、材料がフォークリフトに降ってきた。


(だから上から降ってくるのやめてくれ)

◾️そして、慣れた人もぶつけていた

ここが、この章で一番言いたいところかもしれない。


僕がいた現場は、カウンターが2台すれ違えないくらい狭かった。


僕はフォークリフトのケツをガンガンぶつけていた。


だけど、慣れた人たちもぶつけていた。

みんなぶつけていた。
ぶつけていないのは、その日たまたま乗らなかった人だけだった。


パレットを乗せる台車にぶつかって、ラインの中にいる作業者に衝突しそうになることもあった。


(これは笑い話にできない。最後にちゃんと書く)

第2章:フォークリフトが下手なのは、たぶんまだ時間の問題

いま「自分は下手すぎる」と思っている人に、先に聞きたいことがある。


乗り始めて、何ヶ月になるだろう。


2ヶ月経っていないなら、たぶんまだ上手い下手の話じゃない。


慣れの話だ。


解説記事を読んでも、だいたい「最初の3ヶ月は誰でも難しい」と書いてある。あれは本当だと思う。僕の感覚だと、2ヶ月も乗っていれば少しずつ体が勝手に動くようになる。

◾️フォークリフトが下手なうちに、まず体が痛くなる

これ、どの解説記事にも書いていないんだけど。


フォークリフトに一日中乗っていると、まず尻が死ぬ。

乗り始めて最初に来るのは、操作より体

お尻 :一日中座りっぱなしで激痛
膝  :アクセルとブレーキを右足だけで踏み続けて痛くなる
左手首:ハンドルを回しすぎて腱鞘炎

腕の問題だと思って落ち込む前に、体のほうを疑ってみてほしい。

尻については、真っ直ぐ座りっぱなしにしないで、右に左に重心を移動させるだけでも少し楽になる。


自分専用の座布団を持ってきている人もいた。


(あれは正解だったと思う。フォークリフトオペレーターは痔になる人が多いらしいので)


膝は、正直なところ慣れるしかない。2ヶ月も乗っていれば落ち着く。


そして手首が痛いなら、それはハンドルを回しすぎている証拠でもある。(そこは後で書く)

◾️ちなみに僕は、乗り物が得意なわけじゃない

ここで一応、言っておきたいことがある。


僕はMTの免許を持っている。


だけど軽トラを運転したときにエンストした。


(MTです。免許、持ってます)


つまり乗り物のセンスで上手くなったわけじゃない。ただ、乗った時間が長かっただけだ。

第3章:フォークリフトの教科書どおりにやると、現場では通用しない

ここからが本題。


「フォークリフト 下手」で検索すると、だいたい同じことが書いてある。

・旋回は広い場所で行いましょう
・同時操作はしないで、ひとつずつ確実に
・水平ボタンやレーザーを活用しましょう
・基本に忠実に、急がない

全部正しい。教習所でもそう習う。


ただ、現場でそのとおりにやれている人を、僕は見たことがない。

◾️「旋回は広い場所で」と書いてあるが、広い場所が無い

僕がいた現場も材料置き場も、カウンターが2台すれ違えない幅だった。


そのまま旋回できない。


どうするか。


材料に爪を刺しながら横を向く。あるいは爪を思いっきり後傾させて、フォークリフトより高い位置に持っていく。そうすると、やっと回れる。


(広い場所があるなら、とっくに使っている)

◾️講習で習った手順を、僕は守っていない

正直に書いておく。


止まる。爪の高さを調整する。差し込む。


講習では、そう習った。


そんなことをしていたら、現場が止まる。


足場鳶の記事でも同じことを書いたんだけど、安全講習の内容と現場は、だいたい乖離している。

▶︎足場鳶の現場で起きていたこと


念のため言っておくと、「だから守らなくていい」という話じゃない。


そうじゃなくて、守れていない自分を責めるのはやめていいという話だ。


守れている人、たぶんほとんどいないので。

◾️水平ボタンもレーザーも、付いてない機体のほうが多い

解説記事には「水平ボタンやレーザーを活用しよう」と書いてある。


活用したい。


付いていれば。


付いていない機体でどうするかが、どこにも書いていない。


僕がやっていたのは、マストの倒れ具合を覚えることだった。


爪を見ても、最初は後傾しているのか前傾しているのか平行なのか、まったく分からない。だけどマストの角度なら、目で見て覚えられる。


(水平器があるなら、いっそ貼ってしまうのもありだと思う)

◾️「同じ荷物を何回も動かすな」が成立しない現場もある

これも解説記事に書いてあった。効率が悪いから、と。


そのとおりだと思う。


ただ僕の現場は、1ラインで5種類くらい材料を使って、完成品の容器と材料の容器が全部違って重ねられなくて、それを一人で10ラインぶん担当していた。


(効率の話の前に、腕が足りない)

第4章:フォークリフトが下手なうちは、その現場のクセを覚えるのが一番早い

じゃあ、どうすれば上手くなるのか。


僕の結論は、下手なりに数をこなすこと。これに尽きる。


ただし、ただこなすんじゃない。

◾️練習は平坦で広い場所でやるが、現場はそうじゃない

練習させてもらえるとしたら、たぶん平坦で広い場所だ。


最初はそれでいい。


だけど現場が斜めになっていたり段差があったりすると、練習どおりに乗っても上手くいかない。


そして練習時間をたっぷり用意してくれる会社は、たぶん少ない。


本番の中で練習するしかないのが現実だと思う。

◾️「この道は右に傾いてるから」を1個ずつ増やす

数をこなすとき、その場のクセを考えながらやると、上手くなるスピードが変わる。


僕が頭の中でやっていたのは、こういうことだ。

「この道は少し右に傾斜があるから、普通より気持ち右に寄せた状態で重ねる」


「このパレットは穴が小さめだから、上からストンと落としても重なりにくい。まずバックレストに当てて爪を後傾させて、手前だけ重ねる。そこから爪を前傾させて、奥も重ねる」

こういうのを1個ずつ増やしていくと、ある日から急に崩れなくなる。

◾️明日から使える小さいやつ

明日から使えるもの

濡れて滑るとき → 爪を地面と平行にする。ほぼ滑らなくなる
根本まで刺せない小さいパレット → マスキングテープを爪に一周巻いて印にする

鉄パレットは、油が付いていたり雨に濡れていたりすると、爪の上で本当に滑る。


急ブレーキを踏んだ瞬間にパレットがそのまま前に滑っていって、材料をぶちまけたこともある。


(これも第1章の事故一覧に入れてよかったかもしれない)


爪の差し込みは、深すぎると奥のパレットまで持ち上げて倒すし、浅すぎると前に転がる。


テープを巻いておくと、目で見て止められる。

◾️真っ直ぐ重ならないときの直し方

基本は、パレットをバックレストにしっかり当てて、真っ直ぐの状態にしてから重ねる。


バックレストに当たってしまって重ねられないときは、こうする。

真っ直ぐに戻す3手順

① バックレストに当てて真っ直ぐにする
② そのまま下に置く
③ ハンドルを真っ直ぐにして、真っ直ぐ下がって持ち直す

これで真っ直ぐの状態になる。慣れてきたら、バックレストに当てなくても重ねられるように練習していけばいい。

◾️体当たりで重ねるのは、やめたほうがいい

手前だけ重なって奥が入らないとき、フォークでドンと体当たりして無理やり重ねる人がいる。


僕もやったことがある。


そうしたら、ラインにいる作業者が「あの人、怒ってる?」と心配していた。


(怒ってない。入らなかっただけです)


音が大きいと、それだけで機嫌が悪い人に見えるらしい。操作の話が、そのまま人間関係の話になる。

◾️ルールを1つだけ決めて、絶対に守る

最後に、これだけは決めておいてほしい。

これ1個でいい

カーブでは、絶対に速度を落とす。

これを確実に守るだけで、荷を横転させるリスクはかなり下がる。

(僕は2回やってから決めた。学習が遅い)


同じように、急ブレーキと急発進も、荷が高くなるほど崩れやすくなる。急操作をしないクセを先につけておいてほしい。


人が飛び出してきたときの急ブレーキは、仕方ない。


だから飛び出してきそうな死角を先に覚えておいて、手前で減速しておく。

◾️ここから先は、たぶん操作の話じゃなくなる

ある程度慣れてくると、気づくことがある。


上手い下手を分けているのは、操作の精度じゃない。


ラインの作業者と、周囲のフォークリフトの動きを、どれだけ読んで合わせられるか。そっちのほうがずっと効く。


(この話をしだすと長くなるので、また別で書く)


同じ工場で起きていたことは、こっちにも書いた。

▶︎仕事が集中する人の特徴4つ

第5章:フォークリフトがまだ怖いなら、その感覚は正しい

ここは笑わずに書く。


フォークリフトが怖いなら、その感覚は正しい。


怖いというのは、危ないことが分かっているということだから。慣れて怖くなくなった人より、ずっとまともだと思う。


ただ、ひとつだけ。

怖いまま、無理をして乗り続けるのが一番危ない。

僕は38.5度で乗って、部品に突っ込んだ。


あれは腕の問題じゃない。判断力が落ちていただけだ。


体調が悪い日は、正直に言って降りていい。


言いにくいのは分かる。だけどフォークリフトは、人が死ぬ機械だ。


僕の現場でも、台車にぶつかってラインの中にいる作業者に衝突しそうになったことがある。


あれが当たっていたら、笑い話にはなっていない。


いま自分がどのくらい消耗しているか分からないなら、こっちで測ってみて。

▶︎今の消耗度を15問で確かめる

あとがき:フォークリフトが上手いかどうかを決めているのは、たぶん他人

2年で「あいつが一番上手い」と言われるようになった。


だけど僕は、自分が上手いとは思わなかった。


今も思っていない。機械の能力を全部引き出せていたかというと、全然そんなことはなかったので。


上手い下手を決めているのは、たぶん他人だ。


自分の中の基準で見たら、たぶん終わりは来ない。


だから今「下手すぎる」と思っているなら、一度だけ考えてみてほしい。

一度だけ

本当に下手なんだろうか。
それとも、自分の基準で見ているだけだろうか。

そう考えられる人は、失敗して直してを繰り返していけば、気づいたときにはその現場で誰よりも上手くなっていると思う。


僕みたいに、ボルトを全部ぶちまけてからでも間に合う。


🦥


ちなみに軽トラは、今でも自信がない。

📋 フォークリフトが下手すぎると悩む人からよくある質問

Q フォークリフトが下手すぎます。向いていないのでしょうか?
🦥
A. 乗り始めて2ヶ月も経っていないなら、まだ向き不向きの話ではないと思います。 解説記事でも「最初の3ヶ月は誰でも難しい」と書かれていますし、筆者の感覚でも2ヶ月ほど乗っていれば少しずつ体が動くようになります。それに操作の精度だけが上手い下手を決めているわけでもありません。筆者はMTの免許を持っていますが、軽トラでエンストするくらい乗り物が得意なわけではないです。
Q どれくらいで上手くなりますか?
🦥
A. 慣れるまでが2ヶ月、その現場で通用するようになるまではもっとかかります。 筆者はサイドフォークとリーチで3年ほど乗ったあと、その現場でカウンターに乗り始めて2年目に「一番上手い」と言われるようになりました。つまり3年乗っても下手だった時期があります。ただし現場の広さや扱う荷によって条件が大きく変わるので、年数はあくまで目安として見てください。
Q 練習させてもらえないのですが、どうすればいいですか?
🦥
A. 本番の中で練習するしかないのが現実だと思います。 練習時間をたっぷり用意してくれる会社は多くありません。そして練習場所は平坦で広い場合がほとんどですが、実際の現場は斜めだったり段差があったりして、練習どおりにいかないことのほうが多いです。だからこそ「この道は右に傾いているから気持ち右に寄せる」というように、その現場のクセを1つずつ覚えていくほうが早いと思います。
Q 爪が水平かどうか分かりません。どうすれば感覚がつかめますか?
🦥
A. 爪ではなく、マストの倒れ具合で覚えるのがおすすめです。 水平ボタンやレーザーが付いている機体なら活用すればいいのですが、付いていない機体のほうが多いと思います。爪を直接見ても、最初は後傾か前傾か平行かが分かりません。マストの角度なら目で見て覚えられるので、そちらを基準にしてみてください。水平器を貼ってしまうのもありだと思います。
Q パレットを真っ直ぐ重ねられません。
🦥
A. 一度バックレストに当てて、真っ直ぐの状態を作り直すのが確実です。 バックレストにしっかり当てて真っ直ぐにする、そのまま下に置く、ハンドルを真っ直ぐにして真っ直ぐ下がって持ち直す。この3手順で真っ直ぐの状態になります。なお手前だけ重なって奥が入らないときに、フォークで体当たりして無理やり重ねる人がいますが、音が大きいと周りから怒っているように見えるので、あまりおすすめしません。
Q 一日乗るとお尻や膝が痛いのですが、普通ですか?
🦥
A. 珍しくないと思います。筆者の周りでもよくある話でした。 お尻は真っ直ぐ座りっぱなしにせず、右に左に重心を移動させると少し楽になります。自分の座布団を持ってきている人もいました。膝はアクセルとブレーキを右足だけで踏み続けるためで、2ヶ月ほどで落ち着くことが多いです。左手首が痛い場合はハンドルを回しすぎているサインでもあります。ただし痛みが強い場合や長く続く場合は、我慢せず医療機関で相談してください。
Q 怖くて運転できません。辞めたほうがいいでしょうか?
🦥
A. 怖いという感覚自体は正しいので、無理に消さなくていいと思います。 怖いのは危ないことが分かっているということで、慣れて怖くなくなった人より安全な場合もあります。ただし怖いまま無理をして乗り続けるのが一番危険です。筆者は熱が38.5度ある日に乗って、部品に突っ込みました。体調が悪い日は正直に伝えて降りてください。辞めるかどうかは状況によるので断言できませんが、事故を起こしてからでは遅いという点だけは確かです。
ナマケ者

ナマケ者

ゆる哲学の布教者/個人事業主

5歳で父を過労死で亡くし、HSP気質のまま働き続けた結果、ストレスが限界を超えて諭旨解雇。半年の引きこもりを経て今に至ります。毎日通っていたパチンコは7年近く行っていません。統計や法律は一次資料で確認して書いています。

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